概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、調査研究本部の伊藤徹也主任研究員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

中国が軍事的な挑発を強めている。潜水艦から弾道ミサイルを試験発射したり、ロシアと合同軍事演習を行ったりしている。9月後半に米中首脳会談が再び予定されており、機先を制したい中国の思惑がうかがえる。笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏、安全保障ジャーナリストの吉永ケンジ氏を迎えた7月14日の放送を踏まえて、出演した飯塚恵子編集委員に聞いた。

中露連携強化試される米国

「第1列島線」巡る攻防

「中国は南シナ海を米海軍が自由に入れない『聖域』にしたい。南シナ海に核兵器を積んだ原子力潜水艦を潜らせて、米国に対する核の抑止を効かせたいと考えている」=小原氏

「ロシア海軍はウクライナで無人機による反撃を受けて、相当なダメージを負っている。それでも『自分たちは極東でまだ力を持っている』とアピールする狙いがある」=吉永氏

伊藤6、7月の中国軍の動きは特に活発でした。中国海軍は7月6日、南シナ海の海南島付近から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を太平洋に向けて試験発射しました。さらに同じ6日から13日まで、山東省の青島(チンタオ)付近でロシア海軍と合同軍事演習を行いました。中露海軍は日本周辺で共同航行も実施して、中国海軍は19日、沖ノ鳥島付近の日本の排他的経済水域(EEZ)内で射撃訓練を行いました。両国は6月にも日本周辺で爆撃機を共同飛行させるなど、看過できません。

トランプ大統領
発射されたSLBMの飛翔ルートのイメージ©️日本テレビ

飯塚中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は昨年9月、北京で「抗日戦争勝利80年」記念の軍事パレードに共に出席して、軍事連携の強化を内外に誇示しました。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記も並び、これを転機に日米への対抗軸が目に見える形で一段強まったように見えます。

中国が南シナ海から今回試験発射したSLBMの射程は1万2000キロに達するとされ、米本土が射程圏内に入ります。小原さんがおっしゃったように、「我々は核の反撃力を持っている。安易に近づくな」という米国に対する牽制のメッセージですが、同じく核を持つロシア、核・ミサイル開発を進める北朝鮮がその背後にいると考えるとかなり不穏な動きです。

トランプ大統領
©️日本テレビ

伊藤中国は南シナ海に強引に進出して、人工島を造り軍事基地も建設しています。中国の権益は南シナ海のほぼ全域に及ぶと主張していますが、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、こうした中国の見解を全面的に否定する判断を示しました。中国は判決を無視したままです。日本、米国、英国、中国を訴えたフィリピンなど14ヵ国は、仲裁裁判所の判断から10年となる7月12日、判決を改めて支持する共同声明を出しました。

飯塚共同声明は日米が主導しましたが、中国はまったく意に介さないでしょう。なぜなら米国のトランプ大統領自身が国際法を軽視していますから。また、日本とフィリピンは5月の首脳会談で、両国間のEEZと大陸棚の境界を画定する交渉に入ることで合意しました。中国はこれに対抗して、フィリピン最北端に位置し台湾との間にあるバタン諸島も中国の領土だとする見解まで持ち出し始めています。

中国は、日本の南西諸島から台湾、フィリピン、南シナ海に至る、いわゆる「第1列島線」とその内側を自分たちの勢力圏として固めようとしているわけですが、最近の懸念は、ロシアとの共同航行や沖ノ鳥島付近での射撃訓練のように、中国が「第1列島線」を越えて太平洋や日本周辺で軍事的な動きを活発化させ始めたことです。中国は今回、日本のEEZ内であえて射撃訓練を実施したと思います。ロシアとの合同軍事演習は、以前より格段に実戦的になっています。日中関係が冷え込む中で、日本に対する示威行為は今後さらに目立ってくるでしょう。

トランプ大統領
第1列島線、第2列島線©️日本テレビ