(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況」によると、在宅医療を受けた推計外来患者数は、平成8年以降増加傾向となっているそうです。医師として、僧侶として、3000人以上を看取ってきた小笠原文雄さんは「幸せに歳を重ねる人ほど我慢が少ないことに気づいた」と語ります。「笑って大往生」するためには、どのように生きていけばよいのでしょうか。今回は小笠原さんの著書『笑って大往生できる人できない人』より、一部を抜粋してお届けします。

大事なのは家族がよかったと思えるかどうか

夫婦仲が冷え切り、家庭内別居が続いていた夫婦のお話です。その夫が余命1カ月となったとき、「家に帰りたい」と言い始めました。妻はどうするのでしょうか。

長谷川隆さんはがんを患って入院し、余命1カ月と宣告されました。「家に帰りたい」と願う長谷川さんでしたが、妻の恭子さんは強く拒否しました。

長谷川さんの主治医から小笠原内科の相談外来に行くように言われた恭子さんが、嫁いだ娘の愛理さんと一緒に来院しました。

私が恭子さんと面会したときは、2人の顔は私のほうを向いているものの、それぞれの体は外側を向いていました。長谷川さんが帰ってくるのを嫌がる恭子さんに対して、愛理さんは「家にいさせてあげればいいじゃないか」と反発していたからです。

私は「かわいそうだ、母娘の未来を救わねば……」と思い、覚悟を決めました。恭子さんに向かって、ゆっくり低音で告げたのです。

「あなたさえいなければ、ご主人の願いはかないます」