ドライビング・ミス・デイジー​

6月22日~7月15日/東京・紀伊國屋ホール
作/アルフレッド・ウーリー
演出/森新太郎 出演/市村正親、草笛光子、堀部圭亮
☎03・3490・4949(ホリプロチケットセンター)
※仙台、名古屋公演あり

ユダヤ系老婦人と黒人運転手の友情を
ベテラン俳優陣が味わい深く表現

1987年にオフブロードウェイで初演、たちまち話題となり、ブロードウェイでも大ヒットを記録した名作『ドライビング・ミス・デイジー』の日本版が、いよいよ上演される。89年の映画版でジェシカ・タンディが演じた元教師のデイジーに草笛光子、モーガン・フリーマンが扮した初老の運転手には市村正親という豪華版。古典や名作を独自の視点で鮮やかに再構築する演出家・森新太郎がスタッフに名を連ね、盤石の布陣でお届けする。

今から70年ほど前のジョージア州アトランタ。夫に先立たれたデイジー(草笛)は、車で出かけようとして、事故を起こしかけてしまう。まだまだ元気だと言い張るデイジーだったが、心配する息子のブーリー(堀部圭亮)は、専用運転手として黒人男性ホーク(市村)を雇う。ユダヤ人として、また元教師としての矜持をもつデイジーは、“成金のようなマネはしたくない”と突っぱねるが、ホークの誠実な仕事ぶりに惹かれ、次第に車に乗るように。ふたりは時にぶつかり合いながらも、少しずつ友情を深めてゆき……。

物語は25年の推移のうちに、なにげない日常が、かけがえのない日々に変わっていく様子を丁寧に描く。20世紀半ばのアメリカ南部は、まだ目に見える形で黒人差別が存在していた時代。デイジーはホークとの交流を通して人種差別を痛感し、さらにユダヤ人である自身への偏見も改めて知る。つらい現実が訪れたときでさえ、ウィットに富んだ会話を忘れず、ありのままに受け止めるデイジーとホーク。その様子は、少しずつ味わいを深めてゆく上質なお酒のようで、なんとも魅力的だ。

飄々としているが仕事はきっちりとこなすホークは、市村にハマり役。一方、80代となった今なお凜とした佇まいで舞台にドラマにと活躍を続ける草笛も、デイジー役に相応しい。現在望みうる最高の配役といえるだろう。

舞台は終盤、認知症になり施設に入所しているデイジーを、ホークが訪れるところまで描く。そしてやってくる驚きの結末とは。登場人物の年齢に近い市村と草笛だからこそ、しみじみとした味わいが伝えられるこの舞台。ぜひその目で見届けてほしい。

 

 

 

 

黒白珠​(こくびゃくじゅ)

6月7~23日/東京・Bunkamuraシアターコクーン
脚本/青木豪 演出/河原雅彦
出演/松下優也、平間壮一、清水くるみ、平田敦子、植本純米、青谷優衣、 村井國夫、高橋惠子、風間杜夫ほか
☎03・5485・2252(キューブ)
※兵庫、愛知、長崎、久留米公演あり

1990年代の長崎。真珠の加工・販売会社を経営する信谷(しんたに)には、勇と光という双子の息子がいた。双子ではあるが、性格も風貌も、考え方も置かれている環境も異なり、また幼い頃に母が家を出て行ったことから、勇は出自について疑念を抱き始め……。聖書のカインとアベルを思わせる家族の愛憎の物語を、人間群像を繊細に描くことに定評のある青木豪が書き下ろした。演出は、的確な心情描写だけでなく、そのエンタメ性でも人気の河原雅彦が担当。松下優也、平間壮一といった若手実力派と、風間杜夫、高橋惠子、村井國夫という手練の役者たちの共演も見どころだ。

 

 

 

 

オレステイア​

6月6~30日/東京・新国立劇場 中劇場
原作/アイスキュロス 作/ロバート・アイク
翻訳/平川大作 演出/上村聡史
出演/生田斗真、音月桂、趣里、横田栄司、 下総源太朗、倉野章子、神野三鈴ほか
☎0120・481034(文学座チケット専用)

トロイア戦争でのギリシアの大将アガメムノンと、その家族にまつわる物語の顚末を、息子のオレステスを主人公にして描いたギリシア悲劇。戦争に勝つための占いで“子殺し”の神託を受け、娘を殺害するアガメムノンと、娘の仇を討つため夫を殺す妻のクリュタイメストラ、そして父の命を奪った母に手をかけるオレステス。

復讐の連鎖に否応なく巻き込まれてゆく若者の姿を、多くの演劇賞を受賞している英国の劇作家・演出家のロバート・アイクが現代に即して脚色する。新国立劇場初主演となる人気俳優の生田斗真が、本作でどんなオレステスを見せてくれるのか期待したい。