《PARCO劇場オープニング・シリーズ 藪原検校》

新しくなったPARCO劇場であの名作を

2020年初頭にリニューアルオープンするも、コロナ禍でオープニングシリーズの演目の上演が中止・短縮となったPARCO劇場。それでもスタッフとキャスト陣の細やかな、時に勇気を伴う検討と実践とが根気強くくり返された結果、一度中止に追い込まれた『大地』(三谷幸喜作・演出、大泉洋、山本耕史ほか出演)は、7~8月に全60ステージを完走。劇場に足を運んだ人だけでなく、行けずとも固唾を呑んで見守っていた多くの演劇ファンや演劇関係者にとって、それは舞台の灯が消えずに済んだことを伝えるニュースでもあった。

そんなふうにして慌ただしく過ぎ去った1年だったが、年が明けてもオープニングシリーズはまだまだ続く。この『藪原検校』は、1973年の開場時に、「西武劇場(PARCO劇場の旧名)オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として初演された傑作。江戸時代の中頃、日本三景のひとつ、松島・塩竈の漁港に男児が生まれる。「親の因果が子に報い」を地でいくこの赤ん坊は、生まれた時から盲目。生きる術を得るべく座頭・琴の市に預けられ、杉の市と名付けられた子は、長じて父譲りの曲がった性根と母ゆずりの醜さ、さらにある“天賦の才”のために、殺しと欲にまみれた稀代の大悪党への同道を駆け上り始める。

同劇場にとってマスターピースともいえる本作で、主演を任されたのは市川猿之助。歌舞伎界の若き天才にして、近年は映像作品にも積極的に進出している。大ヒットドラマ『半沢直樹』2020年版では「詫びろ~」と連呼する伊佐山泰二を演じ、お茶の間人気も沸騰中だ。歌舞伎から現代劇、テレビドラマと巧みに演じ分ける猿之助だが、なかでもそのうまさを存分に堪能できる役どころのひとつが“孤独な悪人”。藪原検校はまさにその系譜に連なる役だけに、期待も高まる。演出は、小劇場出身ながら猿之助が手掛けたスーパー歌舞伎の演出を務めた気鋭の杉原邦生。伝統と革新を併せ持つふたりが贈る、新たな藪原検校。その本番を、楽しみに待ちたい。

PARCO劇場オープニング・シリーズ 藪原検校
2021年2月10日~3月7日/東京・PARCO劇場
作/井上ひさし  演出/杉原邦生
出演/市川猿之助、三宅健、松雪泰子、 髙橋洋、佐藤誓、宮地雅子、松永玲子、立花香織、みのすけ、川平慈英
☎03・3477・5858(パルコステージ)
※愛知、石川、京都公演あり