家庭をまったく顧みない夫に不満を募らせ続けてきた妻たち。子どもが独立して夫婦2人暮らしになった今、ふと「夫の突然死」を妄想することも──。2人目は結婚60年、ずっと夫に罵倒されてきた礼子さんのケースです
私を女中扱いしてきた夫
いよいよ介護が現実のものとなりつつある浅野礼子さん(82歳)は、《その時》を待っていた。夫(85歳)は、かなりの亭主関白。家事は一切できず、しようともしない。
「おい、あれ、持ってこい」と常に命令口調。礼子さんが何のことかわからずもたもたしていると、「なんだよ、お前バカじゃないのか。あれだよ、あれ! 早くしろっ」と、結婚してから約60年もの間ずっと罵倒されてきた。
夫は若い頃から「女は三歩後ろを歩いてついてこい」というタイプ。お風呂も夫が先。寝る時には布団の用意をさせ、家のなかではまるで《お殿様》で、礼子さんを女中扱い。
夫が仕事でいない平日の昼間であっても、友人とお茶を飲みに行くと「良いご身分だな」と嫌みを言われて行けなくなった。休日に出かけるなんてもってのほか。同窓会ですら出席を「許して」もらわなければならない。
礼子さんはいつしか、夫に対して常に萎縮するようになった。
「こんな生活はもうイヤ。いつか夫に介護が必要になった時、今までの恨みを晴らしてやる」