ビリー・アイリッシュ
ホエン・ウィ・オール・フォール・
アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?

ユニバーサル
2200円

愛らしいけれどアンニュイな声

アメリカ・カリフォルニア生まれの17歳。ビリー・アイリッシュのこのアルバムは、自国アメリカとイギリスで初登場1位を記録。イギリスでは、17歳と3ヵ月で1位になった女性ソロ・アーティストとしては最年少記録だという。昨年の段階で、英BBCが選ぶ2018年期待の新人「BBCミュージック・サウンド・オブ・2018」に選ばれたり、アメリカのレコード業界誌『ビルボード』でも「次にブレイクする21歳以下のアーティスト」に選出されて話題になっている。

またこのアルバム・ジャケットも、白目のコンタクトを入れた顔写真のユニークさにドキッとさせられるが、ネットで「BILLIE EILISH」と検索すると、おでこにクモが描かれた写真や黒い涙を流していたりと独特のファッション・センスで注目を集めているらしいことが分かる。新しい時代のファッション・アイコンでもあるという。

すでに日本では18年夏のサマーソニックに登場。このデビューアルバム以前に、ネットで発表されて再生回数が50億回を超えた楽曲を集めて、日本独自企画のCDを12月に発表している。愛らしいけれどアンニュイな声。自分も含めて対象を正直にクールに突き放した歌詞。誰にも理解されない自分の感性に傷つき、涙をたたえているような声に、思わず耳も心も鷲摑みにされるのは、きっと聴き手が若いほど強烈だろう。昨年から今年にかけて最も話題を呼んでいる、「時代を代表する」1枚だ。

 

 

 

ピンク
ハーツ・トゥ・ビー・
ヒューマン

ソニー
2200円

同性として大きな共感を覚える

それとは対照的に2児の母で、大胆に世界や社会が抱え込む矛盾や差別などにも鋭く切り込みながら、温かい母性と真逆の宙吊りパフォーマンスなどで人気のピンク。彼女の《ハーツ・トゥ・ビー・ヒューマン》が、人間としてもシンガー・ソングライターとしてもスケールが大きく、成熟していて素晴らしい。アメリカはもとよりイギリスでも大人気で、19年3月から始まったツアーは、北米、ヨーロッパ、南米を回って11月まで続くが、何とか日本でももっと人気が出てアリーナ級の聴衆を集められないと、さらに来日が難しくなるのでは……と心配になる。

さてこのアルバム、前作の《ビューティフル・トラウマ》がそうだったように、豪放なイメージとは違って、自分の秘密がバレることを恐れて少女のような声で歌う〈マイ・アティック〉や、カリードをゲストに迎えて「あの大統領を好きなふりなんて出来るの? 恋してるふりなんて出来る?」と歌う〈キャン・ウィー・プリテンド〉。「今夜はずっとそばにいると言って。世界は間違ったことにあふれているから一人では立ち向かえない」と、閉塞感と政治的な不安がにじむ〈ウォーク・ミー・ホーム〉など、特に同性として大きな共感を覚える素晴らしい作品になっている。もっともっと大人の女性に聴いてほしい人だ。

 
 

 

コリー・ハート
ドリーミング・タイム・
アゲイン

ワーナー
2037円

子育て専念から見事にカムバック!

最後は、20年ぶりにアルバムを出してくれたカナダのコリー・ハートだ。1980年代はブライアン・アダムスや英国のポール・ヤングなどとともに大人気のロッカーだったが、25年前に結婚。3人目の子供が生まれた時に、父親として子供に寂しい思いはさせたくないと、あっさり第一線から身を引いて子育てに専念。

このほど4人目の男の子が15歳になったのを機に、見事にカムバックに成功。19年5月31日、57歳の誕生日にカナダで始まるツアーは、いきなりポール・マッカートニーと同じアリーナ級の会場と、大変なフィーバーを巻き起こしているのだ。

アルバム《ドリーミング・タイム・アゲイン》のタイトル曲をYouTubeで見ては、こんな誠実で素敵な人が現実にいるのか……と涙が出る。7月に来日するので、ぜひ!!