2020年8月30日、ニューヨークで『MTVミュージックアワード』に出演。動きが揃ったシンクロダンスをはじめ、キレがあって華やかなパフォーマンスもBTSの魅力の一つ(提供:MTV/AFP/アフロ)

 

熱狂的なファンダムがあったからこそ

BTSのファンは《ARMY(アーミー)》と呼ばれている。ARMYがほかのファンと違うのは、活動が世界的規模で行われ、多大な影響力を持っている点だ。

たとえばBTSに関する情報を、多言語に翻訳して即座にシェアする。BTSが、人種差別抗議運動である「Black Lives Matter」に100万ドルを寄付すれば、ARMYも同額を集めて寄付をするなど、そのスケールは大きい。キムさんは言う。

「BTSとARMYの間には、音楽から受けた愛や救いなどの恩恵を社会活動で返す、という関係性ができあがっています。しかも彼らはただ応援するだけではありません。時に厳しく批評・批判をし、問題が発生すれば事務所に抗議活動をして、長い論文を書く。この熱狂的なファンダム(ファンによって作られる大規模なコミュニティ)があったからこそ、世界がBTSに気づいたのだと思います」

一方、湯川さんはアメリカでの成功の一因として、受け皿たる土台の成熟を挙げている。

「古い話になりますが、1960年代の後半にベトナム戦争がありました。戦後、アメリカはベトナムに兵を出してくれた韓国に感謝して、大量の永住権を発行。その結果、70年代に入ってから、多くの人が韓国からアメリカに渡っています。その時に移住した世代の子どもたちが現在40代、50代になり、エンターテインメント界を含む現地のさまざまなビジネスシーンで活躍している。つまり、自国の産業を支える土台ができているのです」