世界的医学誌が発表した、認知症危険因子「難聴」

2020年、世界的に権威のある医学誌ランセットが「認知症の約40%は予防可能な12の要因により起こると考えられる。そのなかで最大のリスク因子は難聴」と発表しました(*1)。その危険因子とは、人生の中で若年期、中年期、それ以降という年代別に分け、それぞれの年代で注意すべきリスク要因が存在するとされ、その中で中年期において難聴が全体の中で8%(*2)のリスク要因があるとしています。

その他の因子として、喫煙(5%)、うつ(4%)、社会的孤立(4%)、高血圧(2%)、アルコール(1%)などがありますが、難聴(8%)がトップ。つまり、認知症の発症を未然に防ぐうえで、きこえについてケアすることが重要であり、衰えが出始めたら早期の対応が必要です。

 

難聴が引き起こす認知機能低下

難聴はただ「聞こえにくい」だけではありません。意思の疎通ができないことや周囲の音が聞こえないことで徐々に外出が減り、ひきこもりがちになります。また、家族や友人と集まっても、会話に入れないことで、孤立感を感じるように。すると脳への刺激が減り、認知機能が低下してしまうのです(*3)。

難聴を「治す」ことができなくても、補聴器などで補うことも効果的です。ただ、補聴器は眼鏡のように、買ってすぐに快適に使えるわけではなく、結局諦めてしまう人も多いのではないでしょうか?

聴覚医療に長年携わり、補聴器に詳しい済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科主任診療科長・聴覚センター長の新田(しんでん)清一先生に聞きました。

「耳に入る音は、内耳にある蝸牛という場所で電気信号に変わり脳に伝わります。蝸牛は年齢とともに高音を感じる部分から弱り、脳に音の情報が伝わりにくくなります。音の情報が入ってこないと、脳が変化して〈難聴の脳〉になってしまう。すると、補聴器を使った時にうるさく感じるのです。3ヵ月間、通院して調整を行えば、脳が回復し、聞き取りが改善します。何歳になっても、〈補聴器リハビリ〉を行えば〈聞こえる脳〉に戻すことが可能です」

【難聴が引き起こす認知機能低下】