東京貧困女子。
彼女たちはなぜ躓いたのか

著◎中村淳彦
東洋経済新報社 1500円

聞くことに徹した取材で
浮かび上がる生々しい本音

本書は、東洋経済オンラインの人気連載「貧困に喘ぐ女性の現実」の、待望の書籍化である。連載中、私も何度か目を通したことがあったが、こうして一冊にまとまったものを読むと、想像以上に過酷で絶望的な貧困の現実に改めて驚嘆し、衝撃を受けた。

AV女優や風俗、介護や貧困などの社会問題を取り上げてきた著者には独自の取材方法があるという。それはインタビュー現場に「自分の価値観を持ち込まない」こと、そして必要最低限の質問以外、自分から話すことはせず「ただただ聞くのに徹する」ことだという。ここでも著者は、年齢も職業も違う女性たちが話すことにひたすら耳を傾けている。言葉すべてを掬おうとしているその過程で、彼女たちの生々しい本音を引き出すことに成功しているのだ。

最初に登場するのは、奨学金だけでは経済的に苦しく、パパ活や風俗で稼ぐ現役女子大生。また奨学金という借金に不安になり、内定した会社を蹴ってAV女優になったという女性は、精神科病院に入院中だ。介護離職したシングルマザーは、すぐに貯金が底をつき、娘も大学を中退した。「自分が貧困みたいな立場になるとは、実際にそうなるまで夢にも思いませんでした」という切実な告白がしみてくる。貧困がこんなにも身近にあることを教えてくれるのだ。

そして貧困に陥るそのきっかけもわかってくる。奨学金返済、官製ワーキングプア、ブラック労働での心神喪失、別れた夫の養育費未払い、介護離職。彼女たちは、社会制度のほころびによってセーフティーネットから落ちてしまった、という見方もできる。貧困女子たちの問題は、そのまま日本の社会構造の問題でもあるのだ。