柚木 Netflixなどの動画配信サービスで、制作予算の大きな韓国や欧米の面白いドラマがいくらでも観られる時代なので、本当は私もそっちを愉しみたいんですけどね。

酒井 それでも日本のドラマを?

柚木 日本のドラマを観続けていると、「過去のあの作品と繋がっているな」とか、ひとりの役者が演じてきた役柄のグラデーションが見えるなど、面白さを発見することができるんですよ。

酒井 私が子どもの頃は《ホームドラマ》というジャンルが確立していて、そこから自分のドラマ観が育ったなと思っています。柚木さんの記憶に残っている作品はなんですか?

柚木 『スウィート・ホーム』(1994年)ですね。子どものお受験をめぐって3組の家族が登場するコメディで、多分、大成功した最後のホームドラマと言ってもいいのではないでしょうか。セックスも日常のものとして描かれていて、夫婦が久しぶりにセックスしたことが、翌日の様子で表現されているんです。

実に晴れ晴れとした表情で、なかでも深浦加奈子さんの「さっぱり」した顔が印象的でしたね。子ども心に「セックスはさっぱり、晴れ晴れするものなのだ」と思ったものです。(笑)

酒井 私が子どもの頃のホームドラマとは違う! 今のドラマも、あまり性を感じさせませんね。ドラマはその時代の価値観を反映するものだと思うのですが、好まれる登場人物も変わってきてます。

柚木 はい。2005年の『anego(アネゴ)』の頃までは、不倫するヒロインを応援する雰囲気が世の中にありましたが、現在はないですしね。