「日本には『この人がなんとかしてくれる』という俳優がたくさんいるんです。」(柚木さん)

夢物語に憧れていても生きていけない

酒井 2000年代はじめ頃が日本のドラマの転換期だと柚木さんは書いておられましたが、とくに興味深かったのが、定職をもたないヒロインについてです。

柚木 『前略おふくろ様』(75~77年)で、男のところに転がり込む無職の女・海を桃井かおりさんが演じて以来、同じような設定のドラマが続々と作られました。なかでもW浅野(浅野温子さん・浅野ゆう子さん)の『抱きしめたい!』(88年)は、頼っていく先を男ではなく同性の親友にしたところが斬新でしたね。

浅野ゆう子さんのような高身長でゴージャスな女性が転がり込むのが面白かったからか、以来そういう役を演じるのは、ほとんどがモデル出身の高身長の俳優になったくらいです。

酒井 ほかに誰がいましたっけ?

柚木 私が大好きな『ロングバケーション』(96年)で、売れないモデル役を演じた山口智子さんもそうでした。ストーリー的には、転がり込んだ先の年下の男と最終的には結ばれてハッピーエンドに。でも、仕事は無職のままだったり、うやむやだったりです。

酒井 自立したヒロインではなかったけれど、当時の視聴者は憧れをもって観ていました。それも2000年代になって変わる、と。