混乱に乗ずる狙いも

「日米欧から制裁を受け、『抜け道探し』をしているロシアから見れば、中国の比重はますます上がっていく。経済力では既に大差がついていた中露だが、今後は政治・外交面でも中国優位が明確になっていくだろう。今回の一件は、ある意味で中国にとってチャンスの部分もある」=鶴岡氏(同)

「3月18日の米中首脳によるオンライン会談では、米国のバイデン大統領が『ロシア支援をしないように』と強い警告を発した。しかし、2月4日の中露首脳会談で、両国は『際限なく協力していく』という宣言を出している。米国は『中国が一切支援しないということはありえない』と見ているようだ」=小谷哲男・明海大教授(3月21日)

飯塚中国は旗幟鮮明な態度を取りづらい状況をしたたかに利用しているとも言えます。基本的にはロシア寄りのスタンスを取って良好な二国間関係を維持。と同時に、表立ったロシア支援を控えれば米国に恩を売ることもできます。皮肉なことですが、背景には米国のバイデン大統領がこれまで「民主主義陣営」対「専制主義陣営」の構図で中国を批判してきたことで、中露を接近させた側面があるでしょう。さらに今回の侵攻で、米国はアジア太平洋地域に振り向けていた外交・軍事的リソースを、欧州に割くことも検討せざるを得なくなった。これも中国にとってはポイントになります。

吉田のらりくらりとした態度を取ることに中国はメリットを見いだしているのでしょう。しかし、中国は仮にも国連の常任理事国です。3月初め、国連総会の緊急特別会合で採択されたロシアへのウクライナ侵攻非難決議で中国は棄権しましたが、ロシアの侵攻にいつまでも「人ごと」のような態度を取り続けることはもはや許されない。大国にふさわしい責任ある行動を取るよう、国際社会は中国への圧力を強めていかねばなりません。

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