東アジア情勢にも影響

「現代にあっても前時代的な戦争を仕掛ける国があるということを、今回のウクライナ侵攻で国際社会は理解してしまった。皆が身構える中で中国が何かをすれば大変なことになる。その意味では、習近平氏はプーチン大統領を苛立たしく思っているのではないか」=小原氏(3月16日)

「中国を念頭に置くと、いま最も重要なのは今回のロシアの試みを失敗の形で終わらせることだ」=鶴岡氏(同)

吉田日本にとって、今回の侵攻を受けて中国の東アジア戦略がどうなっていくかという問題は極めて重大です。中国による侵攻が懸念されている台湾問題に即していえば、有事への警戒感が高まり、世界が一丸となった経済制裁の厳しさを中国に知らしめたことはプラス要素でしょう。しかし、ロシアの「核兵器による恫喝」が一定程度効果を与えた点など、不安な要素もあります。この間、国内では「核共有」を検討する議論も提起されましたが、日米同盟を基軸として有事にどう備えるのか、改めて考える必要があります。

飯塚鶴岡氏が指摘したようにロシアの野望をくじくことは中国の覇権的行動を抑止することにもつながっていく。日本としては対露経済制裁が一つの手段ですが、日本企業も参画してロシアから液化天然ガスを輸入するプロジェクト「サハリン2」などのロシア権益について、日本政府は撤退しない方針を示しました。国内のエネルギー事情も逼迫(ひっぱく)していますが、この問題は日本の姿勢を問われる試金石になっていくでしょう。

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吉田20年以上権力を掌握してきたプーチン氏も、ウクライナ侵攻の誤算により権力基盤が足元で揺らいでいるのではないかとの観測もあります。対露制裁の効果をさらに高めるよう、日本も知恵を絞らねばなりません。

飯塚中長期的には、国土が荒廃したウクライナに対して西側諸国は万全の復興支援体制を取る必要があります。それは、第二次世界大戦後に作られた国際秩序の破壊を図る勢力に国際社会が屈しない意志を示すことにもなる。とりわけ大震災などを乗り越えてきた日本は、復興支援で大きな役割を果たせるはず。その検討も周到に進めておくべきです。

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解説者のプロフィール

飯塚恵子/いいづか・けいこ
読売新聞編集委員

東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。1987年読売新聞社入社。 政治部次長、 論説委員、アメリカ総局長、国際部長などを経て現職。

 

吉田清久/よしだ・きよひさ
読売新聞編集委員

1961年生まれ。石川県出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1987年読売新聞社入社。東北総局、政治部次長、 医療部長などを経て現職。

 

提供:読売新聞