概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫るBS日テレの報道番組「深層NEWS」。(月〜金曜 午後10時から生放送)読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

ロシアのウクライナ侵攻が続く中で、注目を集めているのが中国の動向だ。侵攻を非難する世界各国とロシアのはざまにあって、微妙な立ち位置を取る中国の思惑はどのようなものか。3月16日と21日の放送に出演したゲストの発言を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

侵攻見守る中国の「損得」

ジレンマ抱える中国

「中国の王毅外相は3月7日の記者会見で、『全ての国の主権と領土は尊重されねばならない』とロシア批判とも取れる発言をする一方、『ロシアの安全保障上の懸念を理解しなければならない』とも言った。この矛盾する主張自体が今の中国の葛藤を示している」=小原凡司・笹川平和財団上席研究員(3月16日)

「中国は和平の仲介に本格的にコミットする気はないように見える。仲介者になる場合はロシアにかなりの譲歩を求めねばならないが、中国にそのような厳しい要求ができるだろうか」=鶴岡路人・慶応大准教授(同)

吉田ウクライナ侵攻を機に対露包囲網が広がる中で、中国の立ち位置が世界の関心を集めています。米国を中心とする民主主義陣営に対抗しようという点で、中国の利害はロシアと一致している。実際、ロシアは中国に経済・軍事面での支援を求めていると言われています。しかし、ロシアに同調すれば全世界を敵に回しかねない。先に中国の政治学者が、ロシアのプーチン大統領から距離を置くよう中国政府に求める文書をインターネット上で一時公表しましたが、これも国内外の世論を探る中国政府の「アドバルーン」だったのではないでしょうか。

プーチン大統領と習主席©️日本テレビ

飯塚そもそも中国には、ロシアを正面から擁護しにくい事情があります。主権国家であるウクライナへの侵攻を肯定すれば、自国の主権が及ぶとしている台湾への他国の容喙(ようかい)を容認することになりかねない。ロシア支援に踏み切ると、自国が国際社会から二次的経済制裁を受ける可能性もあります。習近平国家主席は、今秋の共産党大会で3期目の政権を無事スタートできるかどうかで頭がいっぱいのはず。経済制裁で国内が混乱すればシナリオが狂ってしまいます。加えて、中国は「一帯一路」構想を通じてウクライナとも連携する関係にあります。一方的な立場を示せないジレンマを抱えているのは事実でしょう。

習主席©️日本テレビ