警備は民主主義を守るコスト

「中露のような権威主義国家では政治指導者が一般市民の前に姿を見せることはまずないが、民主主義国ではそうはいかない。だからリーダーをしっかりと守る警備が必要なのだが、日本はそうなっていない」「日本人は『民主主義で選ばれたリーダーをどうやって守るか』という意識が非常に弱い。根本的な議論が必要だ」=福田氏

飯塚今後の要人警護のあり方を考えていく上で参考になるのは海外の実情ですが、米国の場合、大統領を警護するシークレットサービスには6000人規模の要員がいます。これに比べて日本のSPははるかに手薄で、「政治家を暴力から守ることは民主主義の根幹だ」という意識は非常に薄いと言わざるを得ません。要人を守るためのコストは民主主義社会を守るためのコストでもある。今後はSP増員などの検討が急務でしょう。

吉田SNSなどでテロにつながる情報を収集するような活動も今後さらに重要になるでしょう。実際に警察庁は2016年、自動的に情報を集める「インターネット・オシントセンター」を開設しています。もちろん過剰な監視社会化は自由主義国として好ましいことではありません。政府が中心になってその辺のバランスをうまく取っていくことが必要です。

”ローンウルフ型”犯罪…どう防ぐ?©️日本テレビ

飯塚来年5月のG7広島サミットでは、テロや犯罪を封じる最高レベルの警備体制を敷く予定です。日本の警察は事前に予定されたこうした大イベントには強い。むしろもう少し日常的な場面で警備の力を発揮できるよう意識改革を進めてほしいです。

吉田不吉なことを言うようですが、1960年には7月に岸信介首相、10月に浅沼稲次郎社会党委員長がそれぞれ右翼活動家に襲われ、浅沼氏は亡くなりました。政治家を狙う犯罪はともすれば連鎖するというのが歴史の教訓です。警備当局はこんな時期だからこそ日本の治安維持に全力を尽くしてほしいものです。

解説者のプロフィール

飯塚恵子/いいづか・けいこ
読売新聞編集委員

東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。1987年読売新聞社入社。 政治部次長、 論説委員、アメリカ総局長、国際部長などを経て現職。

 

吉田清久/よしだ・きよひさ
読売新聞編集委員

1961年生まれ。石川県出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1987年読売新聞社入社。東北総局、政治部次長、 医療部長などを経て現職。

 

提供:読売新聞