政治は遠い世界のこと?

 戦後、女性は選挙権を得て政治参加ができるようになった。ところが今、衆議院の女性議員の割合はわずか10%。世界の中でも下から数えたほうが早い。なぜ女性たちは拳を振り上げないのか。『婦人公論』も、今は政治の記事が少ないですね。市川房枝や山川菊栄といったスターが輩出した輝かしい歴史があるのに。

酒井 今の『婦人公論』は、中高年向けというイメージですが、当初は対象を年齢で切っていませんでした。婦人解放に関心のある“意識高い系”の婦人全般が読者ターゲットだった。

 なぜ変わったのでしょう。

酒井 “意識高い系”と思われることを避けたい、という意識はあるように思います。仕事も夫も子どもも、すべてを手にしたい女性にとっては、世の中を良くする前に、自分の生活を良くしたいから、政治は「遠い世界のこと」という受け取り方になるのでは。

 政治学者としては、身の回りの話にどんどん矮小化していくのはどうなんだろうと思います。地方議会では、女性議員が1人もいないところがある。そういった事態を「問題だ」と批判している女性の政治学者もいる。『婦人公論』はそういう人たちをどんどん登場させてほしい。

酒井 女性の地位向上といった色が、最近はちょっと薄いですよね。私も、政治と女性の関わりについての記事は、もっと読みたいところ。最近は、老後不安や心の問題などがよく取り上げられます。また、スキャンダルの渦中にある人物が登場するのも柱の一つ。そういった記事と、「なぜ女性議員が少ないのか?」といった問題提起を一緒に読めるのが、『婦人公論』なのだと思います。

 大正から平成に至る時代のうねりを、一つの雑誌の変遷から見る。楽しい体験でしたね。

酒井 改めて、「私は雑誌が好きなんだ」という気持ちを思い出しました。粗削りな、その時しか読めない情報に手軽に触れられるのが雑誌の魅力。「過去を通して時代を見る」という楽しさも、教えてくれます。