松岡 だから僕は明美さんの解説が好きなんだな。いつも選手の奥深い部分を取材されていますよね。
増田 選手の人となりを知ってもらうことで、選手に感情移入してほしいから。特にマラソンは競技時間が長いので、「選手である前に人である」という部分を伝える時間が十分にとれるんです。大会や練習場をできるだけ訪れて選手と関係を築き上げ、素顔が見える話を聞き出すようにしています。
松岡 選手の人柄や生き方を共有できたとき、人はより応援したくなる。僕も同じ考えです。
増田 『報道ステーション』で修造さんのコーナーを見るたび、競技だけでなく、選手の人となりを伝えようとする感性が私と一緒だな、と思っていました。ただ私はレースの分析をしなきゃいけない場面で、「~さんは、ハロウィンのネイルアートをしています」などと、どうでもいいことをしゃべりすぎる、とお叱りを受けることもあるんですよ。(笑)
松岡 僕は選手にインタビューする際、「強さ」より「弱さ」に注目するようにしています。こんなにすごい人だけど、弱さも持ち合わせている。そういう人間的な魅力を知ったとき、観る人はより選手に共感できると思うので。たとえば、2022年のサッカー・ワールドカップで活躍した長友佑都選手。
増田 「ブラボー!」の長友さんね。
松岡 帰国後にインタビューした際、「メンタルは技術」で、ネガティブをポジティブに転換できるのは、それまでの失敗、挫折、弱さがあったからだ、と。あの「ブラボー!」という強い言葉は、周りを前向きにし、チームに《できる!》と信じさせる力になっていたんです。