松岡 選手はもっと自由でいい、という流れに変わってきました。ちょっと誤解されてしまいそうな、自信過剰な言動の選手が増えたと感じる人もいると思いますが、それが日本の選手の強さになったのも確かですね。
増田 かつて、監督と選手は主従関係に近かったと思うんです。選手は多方面に気を使い、発言も控えがちだった。でもいまはSNSを発信の場として使う人も増えましたね。陸上の新谷仁美さんは、自身の考えだけでなく、苦しみも発信しています。
松岡 それも、観る人の「応援したい」に繋がっていく。
増田 パラ陸上で活躍する中西摩耶さんは社会におけるアスリートのあり方まで意識されていて、故郷の大分県で災害が起きると、飛んでいって支援をしているんですよ。
松岡 昨年引退したスピードスケートの小平奈緒さんも、台風19号で長野県が被災したとき、ボランティアに自ら応募し、名前を伏せて活動していた。応援されるばかりではいられない、応援できる人でありたい、と。素晴らしいと思いました。
増田 平昌オリンピックで小平さんの記録に会場が沸いたとき、次の選手が競技に集中できるよう、口に指を当てて「シーッ」というジェスチャーをしたことを思い出しますね。ライバルのイ・サンファさんの肩を抱くシーンも含め、どれほど多くの人の心を打ったか。
松岡 スピードスケートをやってみたいと思わないまでも、小平さんのような人間になりたいと思った人は多かったんじゃないかな。スポーツには人と人を繋げる力や、人を前向きにする力があると、小平さんにお会いするたびに感じましたね。