自分にかけられた呪いは自分で解く
日常的に繰り返し言われる言葉に、人は縛られる。わたしの知人女性は、母親から常に「あなたは妹に比べて不器量なんだから、勉強して手に職をつけなさい」と言われていた。子の将来を案じたのだろうが、成長してからも彼女の心はこの言葉に縛られ、男性に心を開けなかった。じつはこの呪縛は、母親に謝ってもらっても解消されない。自分に植えつけられた呪いは自分の手で解いてはじめて幸福になれるのだ。
「不器量」という言葉が呪いなのだと気がついたとき、彼女は明るくなった。誰かの態度に期待するのではなく、自分の価値観を一新しよう。そんな対処に変わった。
労働問題にくわしく、国会ウォッチでも知られる学者がこの本の著者だ。女性は、家庭でも職場でも、呪いの言葉をかけられがちである。こういう言葉を言われたら、それは裏にこういう意味をかくしている。圧力をかけてあなたを縛ろうとしているのだから、こう返答しよう。そういう具体的な記述がこの本にはたっぷりあって、日ごろうっぷんをためている人なら、読むだけでもちょっと溜飲が下がるに違いない。
「金をもらえるだけありがたいと思え」「選ばなければ仕事はある」などの言葉が、わたしたちを黙らせようとする。でも、不当に低い賃金で人を働かせていいわけではないし、自分の意思で仕事を選べない社会は、やがて破綻に向かう。自分の人権を守る行動は決して「自分勝手」ではなく、回り回ってどこかの誰かを救う。
自分にかけられた呪いは自分で解く。そして、自分から他の誰かに呪いをかけない。そんな心がけで生きていくための武器を手に入れよう。
呪いの言葉の解きかた
著◎上西充子
晶文社 1600円
著◎上西充子
晶文社 1600円