また、藤木さん宅には、父親が大事にしていた刀のも遺されていた。ヤフオク! などで調べると、同じ銘の鍔に20万円ほどの値がついている例もある。期待しながら刀剣の専門店で査定してもらったところ、江戸末期に作られた本物であることが判明。脇差の鍔だという。
「ただ、赤錆が出ていて、その分査定金額は下がると言われました。刀の鍔は、頻繁に触れることで手の脂がつき、錆防止になるのだと説明され、びっくり。触れてはいけないと思い、箱に入れっぱなしにしていたことが裏目に出て、価値が下がってしまったのですね」
日本美術刀剣保存協会の認定書もついていたが、旧式だったため書式変更しなければならず、その費用として3万円ほどかかる。新たな認定書の作成費用を差し引いた買取金額は、3万円くらいだと言われた。
「その程度の金額なら、売らずにインテリアとして飾ろうと思いました。というのも、母のブローチを売った時、けっこういい値がついたと喜んでいたのですが、その7万円は生活費としてなし崩しに消えてしまって」
母親が大事にしていたものを換金したことに対して、うっすら罪悪感も抱いているそうだ。
「当時は、両親の家じまいが大仕事だったので、つい勢いに任せて早々に処分してしまいました。自分が身につけなくても、遺影の前に飾って、思い出のよすがにすればよかったのに……。サイズが大きい物以外は、何年かたって落ち着いてから考えればよかったと思います」と、藤木さんは後悔をにじませた。