NODA・MAP 第23回公演『Q:A Night At The Kabuki』 「4人のロミジュリ」を演じる、広瀬すず、松たか子、上川隆也、志尊淳(左から)
 

ロミオとジュリエットの“その後”

悲恋で死んだはずのロミオとジュリエットが、本当は生きていたら? 野田秀樹の今回の新作『Q:A Night At The Kabuki』は、そんな仮定から広がる『ロミオとジュリエット』の後日譚だ。生き残った彼らは、青春が終わったあとも、人生を歩まなければならない。野田は、少年少女と壮年男女、2組4人のロミオとジュリエットを登場させ、物語を進める。

しかしそのタイトルが、ロミオにもジュリエットにも関係なく、なぜ『Q』なのか。なんとこれは、イギリス出身の世界的ロックバンド、クイーン(QUEEN)の「Q」だという。

野田のもとに、ある日突然“クイーンの周辺”から、「クイーンが愛する日本で、彼らの名盤『オペラ座の夜』の世界観を舞台にできないか?」というオファーが舞い込んだ。『オペラ座の夜』(1975年、原題『A Night At The Opera』)は彼らの4枚目のアルバムで、大ヒットした映画のタイトルとなった名曲「ボヘミアン・ラプソディ」を含んでいる。

そこで野田はアルバムを聴き込み、歌詞を読み込み、創作ワークショップを重ね、アルバムの全曲を使用した「その後のロミオとジュリエット」という着想を得る。歌詞から、かねて書きたいと思っていた後日譚の世界に通じるものを感じたのだ。その構想にクイーンのメンバーからもOKが出て、企画が進み出した。

キャストには豪華で新鮮な役者が揃った。「4人のロミジュリ」を演じるのは、松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳。壮年ロミオとジュリエットが上川と松で、若いカップルが志尊と広瀬だ。さらに橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、竹中直人、そして野田秀樹といった、キャリア十分で個性豊かな陣営が舞台を弾ませる。連続テレビ小説『なつぞら』のヒロイン役で芯の強さを見せた広瀬は、舞台初挑戦となる。

舞台は意外にも、12世紀末の日本。世は侍の時代の始まり……。そこに、あのクイーンの名曲が聞こえてくるという。とはいえ野田のこと、立ち上がった舞台では、当初の構想をはるかに超えた世界を見せてくれるはずだ。私たち観客をどこまで遠くに連れていってくれるのか。マジカルな野田ワールドを楽しみにしたい。

 

NODA・MAP 第23回公演
Q:A Night At The Kabuki

10月8~15日、11月9日~12月11日/東京・東京芸術劇場プレイハウス
作・演出/野田秀樹 音楽/QUEEN
出演/松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、
橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、野田秀樹、竹中直人
☎03・6802・6681(NODA・MAP)
※大阪、北九州公演あり

*****

 

『宮崎駿の雑想ノート』より『最貧前線』

 

宮崎駿のオリジナル作品の舞台化は国内初

開館30周年を迎えた水戸芸術館ACM劇場が、宮崎駿の『最貧前線』を舞台化し、水戸をはじめとした全国8都市で上演する。原作は、1980~90年代にかけて模型雑誌に不定期連載された『宮崎駿の雑想ノート』の一篇。5ページの小品ながら平和への願いを込めて描かれた漫画だ。宮崎のオリジナル作品の舞台化は国内初となる。

太平洋戦争末期、小さな漁船・吉祥丸は軍に徴用され、わずかな装備で南方の危険な最前線へ向かうことに。はたして吉祥丸は無事に戻れるのか。生きぬこうと奮戦する漁船の船長に内野聖陽、海軍の艇長に風間俊介、副官に溝端淳平といった実力派が出演する。

 

『宮崎駿の雑想ノート』より
最貧前線

9月12~15日/茨城・水戸芸術館ACM劇場
10月5~13日/東京・世田谷パブリックシアター
原作/宮崎駿 脚本/井上桂 演出/一色隆司
出演/内野聖陽、風間俊介、溝端淳平、ベンガルほか
☎029・227・8123(水戸芸術館ACM劇場)
※横浜、豊橋、上田、新潟、兵庫、大和公演あり

*****

 

iaku『あつい胸さわぎ』

 

否も応もなく「命」と向き合うことに

大阪発の演劇ユニットiakuの劇作家・横山拓也は、鋭い観察眼と綿密な取材に基づき、人間関係を多面的に捉える作品を多数発表。議論や口論をエンターテインメントに仕上げる会話劇の名手だ。昨年は「許し」がテーマの『逢いにいくの、雨だけど』で高い評価を受けた。

今回の新作『あつい胸さわぎ』では、大学生の娘とその母親、それぞれの恋愛を軸に、病気や社会的な障壁にぶつかる家族と周囲の姿を描く。奥手な娘に恋心が芽生え、母は20年ぶりの恋に胸が高鳴る。そして笑いの絶えない2人暮らしの部屋に、娘の健康診断の結果が届く。娘はがんだとわかり、2人は否も応もなく「命」と向き合うことに……。

 

iaku
あつい胸さわぎ

9月13~23日/東京・こまばアゴラ劇場
9月26~29日/大阪・インディペンデントシアター1st
作・演出/横山拓也
出演/辻凪子、枝元萌(ハイリンド)、田中亨(劇団Patch)、
橋爪未萠里(劇団赤鬼)、瓜生和成(小松台東)
☎080・9759・2383(iaku)