素人っぽさが大きな魅力
素の魅力が求められるようになれば、アイドル化の流れも強まる。
アイドルもまた、素人っぽさが大きな魅力の要素になるからである。伊藤つかさなども、その素人感が主たる人気の理由だった。
だが伊藤つかさの場合は、守ってあげたくなるような、自己主張の希薄な古典的なタイプのアイドルだった。
ところが、1980年代後半になると、同じ素の魅力と言っても、はっきりした自己主張を前面に押し出すような、伊藤つかさとは真逆なタイプのアイドル的子役の時代がやってくる。
その先頭には、『あっぱれさんま大先生』への出演が叶わなかった後藤久美子、そしてもうひとり宮沢りえがいた。
※本稿は、『子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(星海社)の一部を再編集したものです。
『子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(著:太田省一/星海社)
「挫折する子役」から大人の俳優へ
「かつての子役は、たとえ爆発的な人気を集めたとしても、子役のままで終わるケースが珍しくなかった。(中略)そこにはしばしば、大人の俳優へと上手く脱皮することの難しさ、それゆえの挫折があった」(「はじめに」より)。ところがこの状況は80年代後半、後藤久美子や宮沢りえなど自己を主張する子役の登場によって転機を迎える。大人の俳優やタレントになるための道筋ができたのである。本書は高峰秀子や美空ひばりなど映画時代に大きな成功を収めた子役から、芦田愛菜や鈴木福など「賢さ」を身に付けた現代の子役まで、およそ一世紀におよぶ子役の歴史的変化を作品と社会の両方から解き明かす。