太田さんいわく、『金八先生』の生徒役をきっかけにアイドル歌手としてデビューする流れが定番化したそうで――(写真提供:Photo AC)
主に、映画・テレビなどで「子供の役」を演じる俳優を指す「子役」。一言で「子役」といっても、美空ひばりさんら「映画」を舞台に活躍した俳優がいれば、「バラエティ番組」で人気を博した内山信二さん、「テレビドラマ」で存在感を高めた安達祐実さんなど、時代や視聴者のニーズに伴い、多くの違いが存在します。一方「子役にはしばしば大人の俳優へと上手く脱皮することの難しさ、それゆえの挫折があった」と話すのが、社会学者の太田省一さんです。太田さんいわく、今は高い人気を誇るジャニーズ事務所も苦境に立たされた時代があり、それを救ったのが子役時代の「たのきんトリオ」、ひいては『金八先生』だったとのことで――。

リアリズムと娯楽性を盛り込んでいた『金八先生』

中学を舞台にした学園ドラマの土壌は、1970年代までにすでに整えられていた。

『金八先生』は、中学生のリアルな悩みや問題に寄り添うという点では、『中学生日記』に近い。

ただ、民放のゴールデンタイムのドラマということもあって、リアリズムを基盤にしながらも随所に大衆受けする娯楽性を盛り込んでもいた。

たとえば、金八先生のクラスの生徒たちが、金八先生役の武田鉄矢が属する海援隊のコンサートに行って、金八と武田鉄矢が“対面”するといった場面(第1シリーズ11話)などは、そうだろう。

いうまでもなく、海援隊は、第1シリーズの主題歌「贈る言葉」(1979年発売)を歌って大ヒットさせていた。