『金八先生』がもたらした生徒役のアイドル化
第1シリーズから、同じジャニーズ事務所所属である田原俊彦、野村義男、近藤真彦の3人が「たのきんトリオ」として爆発的な人気を博したことは有名だろう。
野村と近藤は同じ1964年生まれで、実際に中学3年生だった。
役柄に応じて、影のある不良の田原、優しい柔和な雰囲気の野村、悪ガキで憎めない近藤といったキャラクターの棲み分けもきちんとされていて、ファン層も重ならなかった。
それは、いま述べたリアルなクラスという『金八先生』のコンセプトから自ずと生まれたものだった。
ジャニーズ事務所は、1970年代前半にはフォーリーブス、そして郷ひろみの活躍で上り調子にあったが、1970年代後半にはその勢いも衰え、苦境に立たされていた。
それを救ったのが「たのきんトリオ」であり、ひいては『金八先生』だったことになる。
その後も子役というわけではないが、ひかる一平(第2シリーズ)などジャニーズタレントが、『金八先生』の生徒役をきっかけにアイドル歌手としてデビューする流れが定番化した。
※本稿は、『子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(星海社)の一部を再編集したものです。
『子役のテレビ史 早熟と無垢と光と影』(著:太田省一/星海社)
「挫折する子役」から大人の俳優へ
「かつての子役は、たとえ爆発的な人気を集めたとしても、子役のままで終わるケースが珍しくなかった。(中略)そこにはしばしば、大人の俳優へと上手く脱皮することの難しさ、それゆえの挫折があった」(「はじめに」より)。ところがこの状況は80年代後半、後藤久美子や宮沢りえなど自己を主張する子役の登場によって転機を迎える。大人の俳優やタレントになるための道筋ができたのである。本書は高峰秀子や美空ひばりなど映画時代に大きな成功を収めた子役から、芦田愛菜や鈴木福など「賢さ」を身に付けた現代の子役まで、およそ一世紀におよぶ子役の歴史的変化を作品と社会の両方から解き明かす。