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地震や台風、豪雨などの自然災害が多発する日本に暮らす以上、防災対策は欠かせません。とくに、ひとり暮らしの高齢者にとっては、命を守ることにも直結します。今すぐできる準備について、専門家に聞きました(構成=島田ゆかり イラスト=macco)
死者・行方不明者の多くは60歳以上
阪神・淡路大震災や東日本大震災、西日本豪雨による土砂災害など、甚大な被害をもたらした自然災害は、みなさんの記憶に深く刻まれていることでしょう。残念ながら、このような大きな災害が今後も起きる可能性は十分考えられます。そのうえ日本は世界の先陣を切って超高齢社会を迎えているため、シニアの防災対策が非常に重要になってきているのです。
ここで、少々ショッキングな数字をご紹介しましょう。実は、過去の災害で亡くなった方の多くが60歳以上というデータがあるのです。たとえば、阪神・淡路大震災での死者・行方不明者の6割は60歳以上。東日本大震災では死者・行方不明者の3分の2が60歳以上でした。西日本豪雨に至っては、犠牲となった方の7割が60歳以上という報告があります。
ではなぜ、シニアは被災時のリスクが高いのか。原因の1つは、健康な成人に比べて足腰が弱り、判断力も低下している場合が多いこと。次に、長年住み慣れた場所への過信。経験値から、「今回も大丈夫だろう」という思い込みにより、逃げ遅れるケースがあるのです。
なかでも深刻なのが、「災害関連死」です。地震による家屋の倒壊や土砂崩れ、津波などに巻き込まれて亡くなるケースを「直接死」と言いますが、災害関連死は避難後に死亡し、災害との因果関係があると認められたものを指します。直接死の割合が全体の1%程度に留まるなか、災害関連死は99%というデータがあるほど。
たとえば、避難所暮らしで持病が悪化したり、災害のショックにより心筋梗塞になったり。家の片づけ中に、疲労によって引き起こされた病気で亡くなった場合も含まれます。高齢者は、この災害関連死のリスクが極めて高いと言われているのです。一方で災害関連死は、事前の備えによって0を目指すことも可能ですから、ぜひ防災対策を習慣化してほしいのです。