概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

ロシアによるウクライナ侵略が3年目に入った。戦線は膠着しており、米国、欧州、日本はウクライナを支え続ける必要がある。欧米に「支援疲れ」も見えるなか、民主主義国の結束が問われている。日本はどのような貢献ができるのか。元駐インドネシア大使の石井正文氏、慶応大教授の細谷雄一氏を迎えた2月19日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

ウクライナに継続的支援を

日本の得意分野を生かす

「経済復興推進会議を、『支援疲れ』の見える欧米ではなく、アジアの日本が主導して開催した意味は大きい。日本は、がれきの処理や地雷の除去で高い技術を持っている」=石井氏

「日本は、軍事的な支援に法的な制約があり、民生的な支援を得意としてきた。戦後の東南アジアなどで、民間企業の投資を含めて、復興と経済発展を支援した実績がある」=細谷氏

飯塚日本政府は2月、東京で、ウクライナの復旧・復興を話し合う経済復興推進会議を初めて開催しました。経団連と日本貿易振興機構(ジェトロ)が共催して、両国の民間企業も多く参加しました。がれきの除去などの復旧支援と、本格復興を見すえたインフラ整備を、日本が官民一体で支える姿勢を示しました。欧米に「支援疲れ」が見えるなか、先々に希望の光を見いだす意味でも、よかったと思います。

復興 日本の地雷除去・がれき処理技術支援©️日本テレビ

番組では、会議にあわせて、ウクライナのコルスンスキー駐日大使にインタビューをしました。コルスンスキー氏は、災害や戦禍を乗り越えてきた日本の歴史にふれながら、「日本は復興の方法を知っている」と語り、日本からの支援に期待を寄せました。いまウクライナが先進7カ国(G7)に一番求めている支援は兵器と弾薬の供与ですが、日本は軍事的な支援に制約があります。高い技術力を生かした、息の長い民生的な支援を得意としており、日本はG7の一員として、できる役割を最大限果たすべきです。

吉田ロシアがウクライナを侵略して2年がたちました。反転攻勢は困難に直面していますが、ウクライナを支え続ける意味を、私たちは再確認しなければなりません。ロシアは、2014年のクリミア併合以降、軍事力を一方的に行使して、ルールに基づく秩序を壊そうとしています。日本は戦後、通商国家として、安定した国際秩序の恩恵を受けてきました。やりたい放題を許すことになれば、日本の位置する東アジアでも秩序が崩れかねません。欧米に「支援疲れ」が見えるなら、なおのこと、日本は毅然とした態度を示すべきでしょう。日本政府は今回、政府の支援だけではなく、民間企業の投資を呼び込む形にしました。長期的で、規模の大きな支援につながります。政府はよく考えていると思います。

停戦論 駐日大使「ロシアと交渉絶対不可能」©️日本テレビ

飯塚同感です。ただ、注意するべきこともあります。ウクライナの公共部門では、いまだに汚職が絶えません。残念ながら、「投資や支援が必要とするところに届かず、無駄になるのではないか」という懸念が残ります。コルスンスキー氏は、番組のインタビューで、「厳しい法律を導入するなど、汚職撲滅に努力している。民間企業の投資が損なわれないよう、監視することを約束する」と述べたのですが。

また、エネルギーをはじめ、ロシアに権益を持っている日本の企業も存在します。民間企業は利益をあげないといけないビジネスなので、ロシアから圧力がかかれば、ウクライナへの投資は控えざるを得なくなることが予想されます。そのため、「ウクライナへの投資は表立っては言いにくい」と考える企業もあるようです。ロシアとの両にらみになる難しさがあります。