末富 うすべに

ざんぐりとした
麩焼きの皮から
ほんのり透ける
うすくれないの妙

麩焼きせんべいは米粉を水で溶き焼いたものに、味噌や砂糖蜜などをつけた素朴な菓子で、その口どけや素材の味わいが茶味に適うため、茶の湯菓子として古くから好まれています。昭和の初めに考案されて以来、末富の定番菓子として知られる「うすべに」は、麩焼きせんべいを二枚に割き、割いた内側を表面にして白蜜を塗り、間には梅干しと砂糖を煮詰めた餡が挟んであります。

和菓子の意匠に日本の色彩感覚が息づいていることはいうまでもありませんが、「うすべに」という言葉から思い描く四季折々の風物の多様さは、私たちの風土の豊かさを物語ります。「春の曙、山かいに匂う桜花、露けき朝に咲き出る槿むくげの底紅の花、月下にほのかな紅葉の色もさることながら、紅梅に降りつむ雪のにじみいろなど」と謳う末富の銘菓。年末年始のさまざまなシーンにも重宝すること間違いなしの逸品です。