フジテレビ「久保みねヒャダこじらせナイト」の久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダインによるおしゃべり連載「久保みねヒャダこじらせ公論」。番組ライブ終了後に楽屋で交わされる、打ち合わせなしの雑談を収録しております。
今回は2025年2月1日に開催されたこじらせライブの後のおしゃべり……の前半です。親って身近なようで、実は知らないことも多いな、と感じました。 (司会・構成◎前田隆弘)親の人生、どれだけ知ってますか?
能町 私のちょっと新鮮な話をしていいですか? お母さんにロングインタビューしました。
久保 おかロン!?
能町 そんな略し方はしません(笑)。
久保 いや、岡村ちゃん(岡村靖幸)の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」の略称が「あのロン」だから(笑)。なんでお母さんにインタビューしたの?
能町 仕事と言っていいのかな……ちょっとは仕事なんですけど、岸政彦さんという大学教授で作家の方がいて、その人がいろんな生活史を作るプロジェクトをやってるんですね(*)。テーマは何もなく、市井の人々に話を聞く。大まかに言うと、その人の人生について聞くという。それを100人とか150人分集めた本があるんです。今までに『東京の生活史』『沖縄の生活史』『大阪の生活史』という本が出てるんですけど。
*社会学者として生活史(ライフヒストリー)を実践してきた岸政彦の監修によるプロジェクト。一般から公募した「聞き手」によって集められた「東京出身のひと」「東京在住のひと」「東京にやってきたひと」などの膨大な生活史を集めた「東京の生活史」を皮切りに、同じ手法で制作された「沖縄の生活史」「大阪の生活史」が刊行されている。
ヒャダ 面白そう。
能町 それの北海道版を作るというプロジェクトがあったから、やりたいと思って聞き手に応募したんです。
──そっか、能町さんは茨城のイメージが強いですけど、生まれは北海道でしたね。
能町 両親とも北海道なんですよ。だからこれはちょうどいい機会だと思って。親にインタビューするなんて、あんまりないじゃないですか。で、やってみたら、やっぱりロングインタビューは面白いんですよ。
ヒャダ 今まで知らなかったことがいっぱい出てきますよね。
能町 参考にしようと思って、今まで出た生活史プロジェクトの本も買ったんですよ。辞書みたいに分厚いから、全部は読めてないんですけど。読んだ感じだと、わりと苦労した話が多めの印象なんです。「あの頃はこんなに大変でね……」みたいな。でもうちの母親は恋愛っぽい話がかなり多かったんですよ(笑)。
一同 (笑)
能町 「こんなに恋愛の人だったんだ」と思って。
ヒャダ それは今のお父さんとってこと?
能町 違います。
久保 お父さん以外との恋愛の話しちゃったの!?
能町 お父さんとの話はむしろほとんどない(笑)。
一同 えーーーーっ!
能町 「こんなみずみずしい高校生活を送ってたのか、この人は……」って感じ。
久保 高校の恋愛話?
能町 高校というか、小学校・中学校からなんですけど。ただ、よくある「私、昔はモテたのよ」みたいな半分冗談の感じじゃなくて、しゃべる話しゃべる話に男の子が出てくるという感じです。でも男と遊びまくりとかいうことじゃなくて、純朴ではあるんだけど……。
──男の話をしようと思っているわけではないけど、自分の半生を語ろうとすると自然に男が出てくるという。
能町 「男が絡んでくる」と言うとすごく生々しく聞こえますけど、素朴な中高生でバキバキのリア充、という感じです。ちょっとびっくりでした。面白かったですけどね。
久保 でも、このタイミングじゃなきゃ絶対知ることができなかったね。
能町 小学生の話から始まるんですけど、その時点で幼馴染みの男の子が3人くらい出てくるし……。
久保 は?
能町 しかもこれ、時代背景でも地域の特性でもないと思うんですけど、実家に男の子が訪ねて来る話がやたら多いんです。
久保 やっぱ北海道だからじゃない? 寒いし。
能町 違うと思うけどなあ(笑)。
久保 うちは男子が来たことなかったし、人んちで遊んでもいなかったな。ファミコンでもない限り。
能町 小学生の同級生ですごくモテてた男の子がいたんですって。クラスの女の子が取り合いをするような。その男の子がそのまま本当にプレイボーイになって、大学生のときに急に外車でデートに誘ってきて、花火を見に行ったらしいんです。「でも結局、何もなかったんだよね。あのときもっと積極的に行ってたらどうなってたかな」とか言うんですよ。
ヒャダ そんなことまで覚えてるんですね。まず記憶力がすごい。
久保 そうやって恋愛に絡んだ形で、いろいろな人生の岐路を覚えてるってことなのかな。
能町 でも本人は「恋愛もちゃんとしとけばよかった」とか言うんですよ。
──本人の中では足りない?
能町 足りないというか、「好かれてはいるけど自分から好きで付き合ったことがない」というやつだと思います。
久保 よくあるやつだ。主体性がなかったんだ。
能町 自分が好きな人もいたんだけど、それはうまくいかなかったらしくて。
ヒャダ 好きな人じゃない人には好かれるという。
能町 モテてたはずなんだけど、自分が好きな人に対してはうまくいかなかったから、それで「ちゃんと恋愛しとけばよかった」になるんでしょうね。
久保 じゃあお父さんとはどうやって出会ったの?
能町 お見合いなんです。
久保 だからこそ、恋愛の「あのとき、もしあのルートに行ってたら」って……。
ヒャダ あーーー! きっとそうですね。
能町 それはある。だからお父さんに関しては「なんで結婚したんだろうね?」とか言うんですよ。
ヒャダ それでもちゃんと子供をこさえて。
能町 そのこさえた子供に向かって、「なんで結婚したんだろうね?」と言うんですよ。すごいですよね。
ヒャダ そこまで好きじゃなかったんですかね?
能町 私が話を聞いているときも、合間合間で5、6回、「なんで結婚したんだろう?」と言うんですよ。で、話を聞き終わったあと、LINEでメッセージが来て、「誰かに愛情を注ぎたかった時期なのかもね」って。
一同 (笑)
能町 普通に友達と恋愛の話してるみたいな感じ(笑)。
久保 親のそんな話、聞いたことない。
能町 お母さん、完全にそういうモードになっちゃって、めっちゃしゃべりたくなったっぽくて。
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