イラスト◎大塚砂織

 

フィンランドの若き女性首相が目指す社会は

フィンランドで34歳のサンナ・マリンが首相に就任した。1児の母にして歴代3人目の女性首相となったマリン。彼女の父はアルコール依存症で、両親は彼女が幼い頃に離婚、生活保護のような経済的援助を受けながら暮らした。7歳のとき、母が女性のパートナーと同居を始め、以降、彼女は女性2人を親とするレインボーファミリーで育った。

性別や年齢、生いたちに関係なく、自分を信じて道を切り拓いてきた彼女のバックボーンには、フィンランドの教育や価値観がある。

たとえば小学校の読書の授業では、本のポスターを描いたり、主人公に手紙を書いたりと、本を読んで感じたことを好きな形で表現する機会がある。方法は十人十色。子どもたちは他の子の作品に触れることを楽しんでいるようだ。

さらにいじめや生徒間のいざこざは、学校と子どもが一丸となって問題解決に取り組む。フィンランドの元大統領が世界各地の紛争解決に尽力してきたように、生徒が調整役となり、当事者たちと解決方法を探るのだ。

マリンは幼少期から、相手が誰であれ、自分の気持ちをきちんと伝えることを大事にしている。小学生の頃には森林伐採に反対するデモのような活動も行った。

彼女は首相になっても、用意された原稿を読むのではなく、その場で感じたことを率直に自分の言葉で語っている。フィンランドでは、性別や年齢よりも個性が重んじられる。人と違うことも、個性と捉えればいい。彼女は応援してくれる親と仲間に支えられ、大学在学中から国会議員となり、今では首相になった。

マリンが目指すのは、どんな境遇で生まれ育っても希望を持てる社会。彼女の行動力があれば、可能なはずだ。(ヘルシンキ在住・森下圭子)