RBG 最強の85才
出演/ルース・ベイダー・ギンズバーグ、ビル・クリントン、バラク・オバマ、 グロリア・スタイネム
上映時間/1時間38分 アメリカ映画
■5月10日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開
人生をかけて偉大な業績を残してきた女性
アメリカでいま、カリスマ的な人気を誇る女性、ルース・ベイダー・ギンズバーグを追ったドキュメンタリー。彼女は頭文字をとってRBGと呼ばれているが、アメリカにおいて3つの頭文字だけで称されるのは絶大な尊敬を集める証拠。JFK(ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ)やMLK(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)らの系譜に連なる。2019年3月に日本公開された劇映画『ビリーブ未来への大逆転』は、フェリシティ・ジョーンズが若き日のRBGに扮して、弁護士として大きな第一歩を踏み出すまでを描いた。
本作の撮影時、RBGは85歳。1993年にクリントン大統領によって最高裁判所判事に任命され、今なお現役で活躍している。コーネル大学時代に出会ったマーティン・ギンズバーグと結婚し、娘を育てながらコロンビア大学ロースクールを首席で卒業。だが、当時は女性が弁護士として就職先を見つけるのは困難で、大学で教鞭をとることに。やがて「女性の権利プロジェクト」立ち上げに尽力し、同プロジェクトの顧問弁護士として活動、最高裁で弁論を行った6件の訴訟のうち5件で勝訴した。
保守に傾きがちな最高裁において、RBGは痛烈な反対意見(多数の判事が支持する意見への反論)を表明し続け、市民の権利を守るために闘ってきた。その毅然とした態度が女性を中心に絶大な支持を集めてきたのだ。
というと、こわもての女性を思い浮かべがちだが、彼女の性格を描写するときによく使われる言葉は「控え目」「内気」「おとなしい」だ。小柄で、首が少し前に傾いているが、85歳になっても肌は艶やか。眼光は鋭いが、はにかんだ笑顔が可愛らしい。
33年にニューヨーク・ブルックリンの貧しいユダヤ人家庭に生まれた彼女は、高校卒業と同時に敬愛する母親を病気で亡くした。その母親の教えが「淑女であれ、そして自立せよ」。一つ年上の夫・マーティンは税務部門の敏腕弁護士であり、ルースの高い能力を信じて家の内外で強力にサポートしてくれた。ルースにとって、陽気で社交的な彼の存在はかけがえのないもので、「マーティンとの出会いは人生で一番の幸運です」と語っている。
女性やマイノリティの権利のために闘い続けるRBGだが、最高裁判事のなかでも保守派として知られたアントニン・スカリアと親しかったというエピソードも愉快だ。法律や社会に対する信念は異なっても、敵対するばかりではない。時に笑いあう、しなやかさ。法律を愛するあまり夜更けまで机に向かう仕事人間である一方、黒い法服に華やかな付け襟を合わせて淑女らしいお洒落心も発揮するし、パーソナルトレーナーについてスクワットや腕立て伏せにも励む。
人生をかけて偉大な業績を残してきた女性の人間的な魅力が満載で、ひたすら心地よく見惚れる。
ドント・ウォーリー
実在の風刺漫画家、ジョン・キャラハンの半生をホアキン・フェニックス主演で描く。アルコールに溺れ、事故により車椅子生活になったキャラハンの絶望と消せない心の傷、そこから立ち直っていく姿をユーモラスに描き出した傑作。ルーニー・マーラら豪華キャストも楽しい。5月3日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
パパは奮闘中!
仕事に忙しいオリヴィエ(ロマン・デュリス)は、幼い息子と娘の世話を妻に任せっぱなし。だがある日、妻は何も告げずに姿を消した。母や妹の助けも借りながらオリヴィエの子育てが始まる。デュリスの好演もさることながら、彼をとりまく女性たちの懐の深さが印象深い。4月27日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開