ヴェネツィア本島の大運河
ヴェネツィア本島の大運河、カナル・グランデを渡る一隻のゴンドラ(撮影:富井義夫)
133の国と地域を旅して、625ヵ所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さん。40年以上にわたって世界中を巡ってきた富井さんによる、『婦人公論』での新連載「世界遺産を旅する」。第11回は、「ヴェネツィア」をご紹介します

人の手で作り上げた森の上の水上都市

イタリア

「アドリア海の女王」「水の都」などとも呼ばれるヴェネツィア。その誕生は、約1500年前にさかのぼります。当時、異民族の侵略から逃れるために、イタリア本土の住民が、湿地帯に集落を形成しました。

その方法は斬新で、約10mの木製の杭を湿地の下にある硬い粘土層に達するまで深く打ち込み、その上に石と岩を積んで土台を作り、街を建設したのです。その様子は、「ヴェネツィアを逆さにすると森が現れる」と言われるほど。118もの島からなる水上都市が今なお現存している価値が認められ、世界遺産に登録されています。

小さな島々を行き来する手段は、水上バス、水上タクシー、ゴンドラ、徒歩のみ。車は一台も通っていません。

ゴンドラに乗ると、狭い水路をゴンドリエーレ(船頭)が滑らかに漕いでいきます。そうして大運河、カナル・グランデにたどり着き、視界が一気に開けたときの1枚がこの写真です。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に描かれたように、貿易大国として栄華を極めたヴェネツィア。多くの船が、ここから大海原へ出航したのです。