概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、調査研究本部の伊藤徹也主任研究員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る

衆院選が小選挙区比例代表並立制で行われるようになって30年たつ。政権交代可能な2大政党制を目指したが、狙い通りになっているとは言い難い。現行制度のプラスもマイナスも含めて検証する時期に来ているようだ。白鳥浩・法政大大学院教授、竹中治堅・政策研究大学院大教授を迎えた2月12日の放送を踏まえて、番組に出演した伊藤俊行編集委員に聞いた。

小選挙区30年狙いと現実は

1票を大切にする制度か

「国会に民意を反映するという点で、小選挙区制はかなり問題がある。自分の投じた票が『死に票』になってしまうとしたら、投票に行くインセンティブが働くだろうか」=白鳥氏

「小選挙区制と比例代表制を組み合わせてきたことがいいのかどうか。『比例で救われる』と思うので、野党はまとまらない。小選挙区の良さが出ず、政権交代も起きない」=竹中氏

伊藤徹2月に行われた衆院選で、自民党は歴史的な大勝を収めました。小選挙区の獲得議席は、自民の249議席に対して、中道改革連合はわずか7議席でした。ところが、投票総数に占める政党の得票割合を見ると、自民は49・2%、中道は21・6%で、得た議席ほどの差はついていません。自民は、一つの選挙区から1人の議員しか選ばれない、いわば小選挙区制のボーナスを得たことが分かります。

ベネズエラ マドゥロ大統領(右)©️日本テレビ
衆院選 小選挙区の結果©️日本テレビ

伊藤俊1996年の衆院選から現行の制度になり、これまで11回実施されましたが、投票率が60%を超えたことは3回しかありません。2月の選挙は56・26%でした。その前は中選挙区制で、いわゆる55年体制になってからでも13回行われましたが、70%を超えなかったことは4回しかありません。その4回も60%台後半です。投票率の低下と選挙制度をどこまで関連付けることができるのかという問題はありますが、小選挙区制に移行して投票率が落ちていることは確かです。

有権者に「自分の1票は何だったんだろうか」という気持ちを抱かせているとしたら、現行の制度が重複立候補を認めているところにも原因があるのではないでしょうか。1票には「この人は落としたい」と思って入れる、いわば懲罰投票の側面もありますが、復活当選してくるわけです。現行制度はそもそも、民意を集約する小選挙区制に重きを置きながら、民意を広く反映する比例代表制というベクトルの全く異なる制度を組み合わせています。もたらす効果という点で、ある意味矛盾を抱えています。少なくとも重複立候補はやめるなど、1票を大切にする視点から制度の検証が必要な時期に入っているのではないでしょうか。

伊藤徹この制度の狙いでもあった政権交代がもう少し起きていれば、有権者も自分の1票が「死に票」ではなく「あしたの多数」につながると感じることができたのかもしれません。野党の力量が試されるわけですが、なかなかうまくいきません。小選挙区は現状、野党がまとまらないと自民に勝てないわけですが、比例の掘り起こしを優先して、野党が乱立する小選挙区が今回目立ちました。多党化の背景には選挙制度も関係しています。

ロドリゲス暫定大統領への要求©️日本テレビ
小選挙区 右傾化のからくり©️日本テレビ

伊藤俊自民は今回、党内でいわばアウトサイダーだった高市首相を担いで、「自民もいろいろ問題はあったけど、これから改革していくんだ」と発信しました。これに対して、中道の当時の野田、斉藤両共同代表のイメージは現状維持に映ったと思います。中道は比例を含めても49議席にとどまりました。これまで政権交代を果たした野党第1党は、公示前に115議席以上を有していました。100議席を超えることが今後の一つの目標になりますが、かなり遠い。歯を食いしばって、政界再編を考えるくらいの勢いでやらないと自民に対抗できません。