「さきめし」は自治体の関心も集めており、奈良県生駒市は客が支払った料金に市から30%を上乗せする取り組みを開始。飲食店支援をさらに厚くした(撮影◎北村森)
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、商品ジャーナリストの北村森さんが、「飲食店支援サービス」について解説します。

自治体や企業の姿勢も支援の後押しに

苦境に立つ飲食店を支える動き、コロナ禍のここ数ヵ月で数々見られましたね。

SNSの活用では、「#別府エール飯」というプロジェクトが早かった。大分県別府市と同市の外郭団体が3月に開始。お店や地元市民にテイクアウトメニューを撮影してもらい、SNSへの投稿を促すというものです。

興味深かったのは、別府市側の姿勢でした。この「#エール飯」に関して、他の地域が同じような取り組みを使用許諾なしで進めていい、としたんです。「#エール飯」に地域の名前をつけてもいいし、「#別府エール飯」のサイトにある文言を使ってもいい。実際、全国各地に「#エール飯」は広がりました。

もうひとつは、この欄でも以前書いた、ベンチャー企業のGigiによる「さきめし」という代金先払いサービス。スマホアプリを通し、支援したい飲食店に飲食代を先に払えます。店側には最短1週間でお金が入る仕組み。

この「さきめし」、5月には飲料大手のサントリーが参画。ユーザーが本来負担する手数料(飲食代の10%)を、期間限定で同社がすべて持つ応援策を始めました。そのインパクトもあってか、6月12日時点で全国9000店もの飲食店が「さきめし」に登録しています。

今回挙げた2つの取り組みには共通点があります。まず、飲食店にコスト負担がない点。さらに、どちらも多くの人や企業・自治体がひと肌脱いでお店を支援しようと動いた点。ある人気店のご主人は、営業休止した期間もテイクアウトや通販を続けた理由をこう話しています。「我々が料理を作るのをやめたとき、漁師さん、農家さん、すべての生産者さん、仲買さんが止まってしまう」。

消費者も店の側も周囲に思いをはせる……次の時代につながる、大事な話だと思います。