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コロナウイルスの感染拡大防止のため、各国のリーダーが会見や動画でメッセージを送っていますが、どうも日本のリーダーたちはうまく真意を伝えられていない? 政治アナリストの伊藤惇夫さんは安倍総理や小池都知事の会見をどう見たのでしょうか――(構成=婦人公論編集部 撮影=本社写真部)

抽象的な言葉を多用すると伝わらない

会見というのは、政治家にとって一番大事な「勝負どころ」です。

テレビカメラの向こうにいる国民に向かってどういった言葉で、どんな表情や身振りをして語りかけるかを徹底的に考えて臨むべき場ですが、最近の安倍総理や小池東京都知事の会見を見ていると、首をかしげるようなことが多い。

安倍総理のこれまでの発言には、以下のような言葉が頻出します。「間髪を入れず」「全力で」「徹底した下支え」「きめ細かい対策」。経済対策については、「リーマン・ショック級を上回る大胆な」「世界でも類を見ない大規模な」……。特徴として、具体性が薄いんですね。

こういった言葉を頻繁に使うと、「あとは聞いたほうが勝手に想像してください」と言われているように受け取られかねない。首相の演説の原稿を作るスピーチライターの人もよく考えないと。具体的な言葉が必要な状況なのに、抽象的な言葉を使っては、ますます伝わらなくなってしまいます。

 

「緊急事態宣言」発令の総理会見~行動指針と対策はセットで

4月7日に安倍総理が「緊急事態宣言」発令のため会見を開きましたが、全国民が注視している会見だけに、記者からの質問がすべて出尽くすまでエンドレスでやってもよかった、と私は思います。しかし、約1時間の会見は、「決定事項の報告」がほぼ半分を占めており、残り半分が記者の質問でした。

会見では、行動制限について「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」という発言がありましたが、これでは一般の人には計りようがない。どういった行動をとればいいのかが示されていません。