少年の命を委ねられた男たち。激論の末に出した答えは――
舞台は陪審員室。12人の陪審員が、父親殺しに問われた少年の罪状を審議している。有罪なら死刑。ただし全員一致が条件だ。証拠や証言は少年に圧倒的に不利で、予備投票では11人が有罪に。それに対して1人、8番だけが「無罪」と異議を申し立てる。「もし我々が間違えていたら……」。陪審員室の空気は揺れ、議論はしだいに白熱化していく。
もともとは映画で有名だった。1954年にテレビドラマとして放送された作品にヘンリー・フォンダが惚れ込み、脚本のレジナルド・ローズと共同で製作して映画化。57年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた。
その後もロシア人監督ニキータ・ミハルコフが舞台をロシアに置き換えて映画化するなど、今に至るまで世界中に影響を与えている「法廷もの」の傑作だ。日本でも、筒井康隆作『12人の浮かれる男』、三谷幸喜作『12人の優しい日本人』など数々の派生作品が生まれた。
舞台化は映画より早く、55年にレジナルド・ローズ自身の手で戯曲化され、日本を含め世界各国で上演されている。2009年には蜷川幸雄がシアターコクーンで演出し、その年の裁判員制度開始と相まって話題を呼んだ。
それから11年。シアターコクーンの、海外の才能と出会う演劇シリーズ「DISCOVER WORLD THEATRE」の第9弾として、気鋭のイギリス人演出家リンゼイ・ポズナーによって上演される。
陪審員12人に役の軽重はないが、ただ1人無罪を主張する8番はメインキャストといっていいだろう。映画でヘンリー・フォンダが演じた8番は今回、堤真一が演じる(ちなみに蜷川演出版では中井貴一)。ほかに、陪審員長を務めるリーダー的な1番にベンガル、冷静沈着で論理的な4番に石丸幹二、野球の試合に間に合うことばかりを考えている7番に永山絢斗、調子のよい広告マンで真剣さに乏しい12番に溝端淳平など、演技派、個性派が並ぶ。
名前でなく番号で呼ばれる12人が、激論のなかそれぞれの弱みをさらし、間違いを認め、意見を修正していく。会話のバトルの果てに彼らが出した結論は?
十二人の怒れる男
9月11日~10月4日/東京・Bunkamuraシアターコクーン
作/レジナルド・ローズ 翻訳/徐賀世子 演出/リンゼイ・ポズナー 美術・衣裳/ピーター・マッキントッシュ
出演/陪審員1番:ベンガル、2番:堀文明、3番:山崎一、4番:石丸幹二、5番:少路勇介、6番:梶原善、7番:永山絢斗、8番:堤真一、9番:青山達三、10番:吉見一豊、11番:三上市朗、12番:溝端淳平(陪審員番号順)
TEL 03・3477・9999(Bunkamuraチケットセンター)
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「対」の連作で示す人間関係の妙
『ピサロ』『エクウス』『アマデウス』などで知られる英国の巨匠ピーター・シェーファー。その彼が30代半ばの1962年に初演した、男女3人芝居2本が連続上演される。第1弾は『わたしの耳』(原題:The Private Ear)。
出演はイギリス留学から帰国後初の舞台となるウエンツ瑛士、個性が光る趣里、お笑いコンビ「かもめんたる」のメンバーで演劇活動も展開する岩崎う大で、演出はマギー。クラシック音楽にしか興味のない内気な青年が、一目惚れした女性を自宅でのディナーに呼び、助っ人の先輩とともに一夜を過ごす。
第2弾の『あなたの目』(原題:The PublicEye)には演技巧者の小林聡美、八嶋智人、野間口徹が登場。
ロンドンで会計事務所を営む夫は、妻の素行を疑い探偵に尾行を依頼。探偵の報告では、彼女は毎日街を歩き回っている。そこに妻が現れ、ある男との出会いを話し出す……。ミア・ファロー主演の映画『フォロー・ミー』の原作として有名な作品を、寺十吾(じつなしさとる)が演出する。
聞きたいものしか聞かない、見たいものしか見ない。そんな困った人たちが繰り広げるしゃれた会話劇だ。2本とも楽しみたい。
わたしの耳/あなたの目
【わたしの耳】9月9~18日/東京・新国立劇場 小劇場
作/ピーター・シェーファー 上演台本・演出/マギー 出演/ウエンツ瑛士、趣里、岩崎う大
【あなたの目】9月22日~10月1日/東京・新国立劇場 小劇場
作/ピーター・シェーファー 上演台本・演出/寺十吾 出演/小林聡美、八嶋智人、野間口徹
TEL 03・5423・5906(シス・カンパニー)
※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください