病気や自然災害、家庭のトラブル。困ったときに救いの手を差し伸べてくれるのは、心を許した友人か、家族か──。もしかしたら、まったく予想もしなかった人かもしれません。三人目は主婦の真美さん(仮名)。飼い猫が脱走した時、助けてくれたのは…(取材・文=武香織)
「不安な気持ちわかります。あっちを探してきますね!」
やはりご近所さんに救われたのが、主婦の真美さん(61歳、仮名)だ。1年ほど前、飼い猫のソラが脱走。大声で名前を呼びながら探していたとき、ふだん道で挨拶する程度の若い女性が声をかけてきた。事情を話すと、「私も猫を飼っているので、不安な気持ちわかります。あっちを探してきますね!」と言うが早いか、彼女は指さした方向へ突っ走っていったという。
「『お願いします』と叫ぶと、彼女は片腕を挙げ親指を立てました。その姿がどんなに心強かったか」
しかし、4、5時間捜索してもソラは見つからない。脳裏に、車に轢かれたソラの姿が浮かぶ。呆然と佇んでいると、どこからか彼女が現れ、「私の家に来て。ソラちゃんの写真入りポスターを作りましょう」と真美さんの手を握った。
「容赦なく私の手を引く彼女に、パソコンが苦手だから無理だと伝えると、『私に任せてください』ときっぱり。その言葉を聞いた瞬間、この子と一緒にいればソラは必ず見つかるという根拠のない自信が湧いてきたんです」