彼女と合流して顔を見るなり、抱きしめていました
彼女の自宅に到着して初めてお互いに自己紹介。近くの大学に通い一人暮らしをしているという彼女、優さんは猫のミミを膝に乗せながら器用にポスターを仕上げた。
「それを手分けして7、8枚、電信柱や町内会の掲示板に貼り終えたとき、ソラが草陰から悠長に顔を出しました。急いで電話で報告すると、それまで頼もしかった優さんが、子どもみたいに泣きじゃくったんです。もう愛おしくてね。彼女と合流して顔を見るなり、抱きしめていました」
その日の夜、優さんとミミちゃんを夕食に招いた。事情を知る夫も大歓迎で、とっておきのワインとチーズを振る舞ったほどだ。
真美さんには、結婚して家を出た娘がいる。たまに顔を合わせても、夫や子どもの愚痴ばかり。そんな娘との会話と違い、優さんの話はどれも新鮮で面白かった。
「彼女、ミミちゃんをひとりぼっちにしないために大学とバイト以外は外出しないそうで。『たまにはうちに預けて、お友達とゆっくりして』と促すと、『このおうちなら安心して任せられます』と満面の笑み。ところが、『やっぱりミミと一緒にいたい』と、預けたためしがないんですよ(笑)」
そんなこともあり、2週間に1度、猫も一緒にどちらかの家でお茶をするのが定番になった。いつか優さんとミミちゃんが引っ越してしまう日を想像しては、寂しさに涙腺を緩ませている真美さんだ。