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病気や自然災害、家庭のトラブル。困ったときに救いの手を差し伸べてくれるのは、心を許した友人か、家族か──。もしかしたら、まったく予想もしなかった人かもしれません。二人目の勝彦さんは気軽なシングルライフを送っていたが……(取材・文=武香織)

腰の激痛で絶体絶命。そこに駆けつけたのは

元料理人の勝彦さん(77歳、仮名)も、突然の病という窮地に助け舟を出され、ことなきを得た一人だ。

10年前、離婚を機に子どもたちとも疎遠になり、アパートで一人暮らしを始めた勝彦さん。顔を合わせればにこやかに挨拶してくるシングルマザーの隣人に、時折、得意な料理を差し入れた。隣人も果物などをお裾分けしてくれる。

そんな当たり障りのない関係が3年ほど続いた頃、腰に違和感を覚えた。玄関先で出くわした隣人の息子、高校2年生の翔くんに「最近、腰が痛くて」とこぼす。すると翔くんは勝彦さんの携帯電話を手に取り、「急に動けなくなったら大変。僕の電話番号を短縮ダイヤル『1』に登録しておくから、いつでも電話してね」。

それから1年経ったある日、病院へ行かず放置していた腰の調子が急変。夜中にトイレへ行くため起き上がろうとしたところ、激痛で身動きできなくなってしまった。

「お漏らしだけは絶対に嫌だ、と救急車を呼ぼうとしたけど、番号がとっさに出てこない。そんな時、携帯画面の短縮『1』の数字が目に飛びこんだ。ボタンを押すと、後光が差したみたいな翔くんが飛んできてね(笑)」