孫ってこんな感じかな……と、感慨深かった

結局、脊柱管狭窄症と診断されて手術することになり、入院中の着替えの運び役も任せたとか。

「彼のお母さんも手伝いを買って出てくれたものの、女性に下着まで届けさせるわけにはいかない。その点、男同士なら気兼ねなく頼める。彼、『お酒もいりますか?』なんていう冗談で和ませてくれてね。孫ってこんな感じかな……と、感慨深かった。お礼にレストランでご馳走したけど、僕のほうが楽しんでしまった気がします」

その後も翔くんは、常に勝彦さんを気にかけてくれている。台風が襲来して避難勧告が出た際、真っ先に「一緒に避難所へ行こう」と呼びかけてくれたのも彼だ。

「でも、腰の持病で大雨の中を歩くのが億劫だから、一度は断った。すると、『なら上の階の人に頼んで、一緒に垂直避難させてもらう。勝彦さんに死なれて一生後悔するのは、僕なんだよ!』と、怒るわ怒るわ……。で、支えられながらしぶしぶ階段を上った次第です」

翌日、ニュースで近隣の川が氾濫し、死亡者が出たと知る。

「ゾッとしました。自分の命のことではなく、自分のわがままで若い彼に十字架を背負わせかねなかった、と」

大人になった翔くんとは、年に3回程度、お酒を酌み交わす仲だ。

「本当は毎日でも一緒に飲みたいけど、頻繁に誘うと迷惑になる。挨拶がてらの会話だけでボケ防止になっているし、それで十分(笑)」


《ルポ》窮地に立たされたとき思いがけない助け舟が
【1】入院前日、苦手な後輩から届いた一件のLINE。心細さに染みた彼女の申し出
【2】腰の激痛で絶体絶命。離婚して独り身だった高齢男性の元に駆けつけたのは
【3】きっかけは脱走した《猫》。女子大生と茶飲み友達になった60代女性
【4】夫の不倫発覚で家出した女性。助けを求めたのは10年前に絶縁した親友だった