孫ってこんな感じかな……と、感慨深かった
結局、脊柱管狭窄症と診断されて手術することになり、入院中の着替えの運び役も任せたとか。
「彼のお母さんも手伝いを買って出てくれたものの、女性に下着まで届けさせるわけにはいかない。その点、男同士なら気兼ねなく頼める。彼、『お酒もいりますか?』なんていう冗談で和ませてくれてね。孫ってこんな感じかな……と、感慨深かった。お礼にレストランでご馳走したけど、僕のほうが楽しんでしまった気がします」
その後も翔くんは、常に勝彦さんを気にかけてくれている。台風が襲来して避難勧告が出た際、真っ先に「一緒に避難所へ行こう」と呼びかけてくれたのも彼だ。
「でも、腰の持病で大雨の中を歩くのが億劫だから、一度は断った。すると、『なら上の階の人に頼んで、一緒に垂直避難させてもらう。勝彦さんに死なれて一生後悔するのは、僕なんだよ!』と、怒るわ怒るわ……。で、支えられながらしぶしぶ階段を上った次第です」
翌日、ニュースで近隣の川が氾濫し、死亡者が出たと知る。
「ゾッとしました。自分の命のことではなく、自分のわがままで若い彼に十字架を背負わせかねなかった、と」
大人になった翔くんとは、年に3回程度、お酒を酌み交わす仲だ。
「本当は毎日でも一緒に飲みたいけど、頻繁に誘うと迷惑になる。挨拶がてらの会話だけでボケ防止になっているし、それで十分(笑)」