共同墓や自然葬など、これまでの常識にこだわらないお墓が今増えている。先祖代々の墓所を子孫に持ち越したくないと考えた女性たちに、行動を起こしたきっかけや直面した難問を聞いた。西村さん(仮名)は、ある一言から墓じまいすることを決めて…(取材・文=山田真理)

お参りするお墓がまた増えるよなあ……

「お墓って、持ち続けるのも手放すのも本当に面倒なものですよね」

とため息まじりに語ったのは、西村留美子さん(59歳・仮名)。まさに現在墓じまいを実行中だという。そこは留美子さんの母方の祖父が、1960年代に公営霊園に建てたお墓だ。

「母は一人娘だったので、『自分もそこに入りたい』と言っていた時期があります。真意を確かめる前に亡くなってしまったため、納骨のときに一瞬どうしようか迷いました。でも一人息子から『おばあちゃんとおじいちゃんが別になると、お参りするお墓がまた増えるよなあ……』と言われて、はっとしたんですよ」

自分も妹も嫁いでしまい、そのお墓に入る予定はない。妹も息子が一人いるが、そのまま残しておけば、子どもたちが受け継ぐお墓が増えてしまう。息子の結婚相手は長女だから、彼女の家のお墓も2人が守っていかねばならない。

「子どもの負担を減らすためお墓は減らしていこうと、母は父方の墓に入ってもらい、母方は墓じまいしようと考え始めました」

ただ母親から自分へ墓地の名義変更を行うとき、霊園の管理事務所に聞くと、「『あの広さだと墓石を撤去して更地にするのに約60万円かかる』と言われて驚きました。そのときはためらってそのままにしたのです」。