内閣府が発表した令和3年版高齢社会白書によると、65歳以上の新体力テストの合計点は向上傾向にあり、75歳以上で運動習慣のある人の割合(令和元年)は、男性46.9%、女性37.8%だった。20~64歳でみてみると、男性23.5%、女性16.9%だったため、その層と比べると高い水準に。平均寿命が延びる中、趣味、あるいは健康のためのエクササイズを始める方も多いのでは。岡田浩子さん(仮名・東京都・主婦・63歳)は、更年期のまっただ中、ひとりになりたくて始めたランニングにすっかり夢中になり――。
思わぬ伸びしろにびっくり
趣味で走り始めて17年。還暦過ぎから走力は落ちる一方だが、走る楽しさは薄れない。
そもそも私がランニングを始めたのは、ひとりになりたかったからである。46歳、更年期まっただ中だった私は、冷え性や肩こりに悩まされて体調がすぐれず、心もすさんでいた。仕事で失敗を繰り返し、できる人をうらやましがって、嫉妬しては落ち込んでばかり。
いつもイライラしているから人間関係もうまくいかず、負のスパイラルにおちいっていた。家では家族にあたってしまうことも多く、いつも不機嫌だった。また、とても仲の良かったママ友と、子どものことで不仲になるということもあった。
ちょうどその頃、第1回東京マラソンが開催されるという話題が世間をにぎわせていた。「走っている女性は美しい」という女性誌の特集を目にするうち、ひとりで完結できるランニングという趣味は、自分にぴったりだと感じるようになったのだ。
勇気を出して買った派手なウエアと短いランニングパンツをはいて、近所の人に見られはしないかとそわそわしながら、練習場に選んだ公園に行くと、そこにはすでにたくさんのランナーがいた。わざわざ電車に乗って大きな公園に来てよかったと、たどたどしく走り出す。
ランニングを始めてすぐに、私はその魅力にとりつかれた。運動経験はなかったが、その分やればやるほど成長していく実感があったからだ。先週は1キロ走れた。今日は2キロ。来週は3キロいけるかな。と、数字で成長が確認できる。この年で伸びしろがあるなんてと、勇気が湧いた。