久保版「枕草子」
久保 なにかを始めるのに、秋はいい季節。でも私、1年前に教習所通ってから、軽車両に乗るのが怖くなっちゃった。
ヒャダ ありますね、逆にね。
久保 ちゃんと交通ルールを勉強すると、「若い頃って、なにも知らずにめちゃくちゃな自転車の乗り方してたな」と思うようになって。(自動車に対して)逆走するとか。
能町 さすがに私も、自転車で右側は走らないです。車道で左側を走ってます。それでもけっこう怖いですけど。
ヒャダ 怖いですよね。最近は電動キックボードもいますしね。
能町 都内で乗ってると、自転車で同じ道を同じ方向に行く人がけっこういるんですよ。そうすると、どうしてもちょっと競走してる感じになっちゃうんです。
──信号がF1のスタートみたいになったりして。
能町 抜かれるとちょっと悔しいんですよ。ガンガン乗ってる感じの人に抜かれたら、それはもうしょうがないと諦めるんですけど、電動の人に抜かれると、「こっちは自力で頑張ってるのに」と思って、本気で抜きたくなったりして(笑)。で、信号で追いついて「よし!」と思ったりとか。
ヒャダ 「お前の頑張り、関係なかったんだよ~だ!」って。
能町 電動ってスタートダッシュが強いんですけど、スタートダッシュでは負けても、そのあとスーッて抜いたりとか。
ヒャダ ははははは!
能町 やっちゃうんですよね。競争心が刺激されちゃって。
久保 能町さんって、そういう競争心あるんですね。
能町 よく「車のハンドル握ると人格が変わる」っていうやつ、あるじゃないですか。私、それの自転車バージョンかもしれないです(笑)。
久保 えっ、そうなの!?
能町 私、実家から東京まで自転車漕いできたこともあるので。
ヒャダ (茨城県の)牛久から?
能町 あ、言ってなかったっけ? まあ全然若いときですけど、22、23のときですかね。実家から自転車を持ってくることになって、60キロの距離を5時間ちょっとかけて。1回だけご飯食べて、それ以外は特に休憩しなかったと思います。
ヒャダ それはまあまあの自転車乗りですね。
能町 意外と自転車野郎なんですよ、私。運動嫌いだし、走るのも嫌いなのに、自転車だけはどこまでも行けちゃう。
久保 すごい……能町さんはちゃんとそういうのがスタートできててえらいねえ。
能町 久保さんも免許取ったじゃないですか。
久保 すみません、もうペーパードライバーに戻ってます。
ヒャダ まあそうですよね。乗らないとそうなりますよ。
久保 もう私、圧倒的に「負けず嫌い」というものが育ってなさすぎて、勝負事に対して「いや、どうせ誰にでも負けるでしょ」って気持ちになりがちなんですよ。自分のこの勝負事に対しての弱い感じ、なんでそうなったんだろう……。
能町 久保さんが将棋を見はじめたとき、まず「相手に勝とうと思う気持ちがわからない」って言ってたんですよね。
──めちゃくちゃ根本の部分じゃないですか(笑)。
能町 よくそれで将棋にハマれたね。
久保 なんか負けグセみたいなのがついてるんですよ。あと、「人生は自分の思い通りにならない」って思いすぎてる面があって。
能町 マンガ家になれたのに。
久保 でもそのマンガ家というのも、「なんで頑張れてたんだろう?」みたいな…………あ、また私、こじらせてるかもしれん(笑)。
能町 そうかもしれない(笑)。こじらせですね。
久保 「秋はこじらせ」。
一同 (笑)
能町 「枕草子」だ。
──僕、久保さんは競争心あるほうだと思ってますよ。
久保 そう?
──魚の話になると、がぜんマウント取ってきません?
一同 (笑)
ヒャダ ほんとですよ! 魚についての対抗意識、ハンパないです。
──よその地方の魚の話になると、「でも長崎の魚にはかなわないね」みたいに……。
ヒャダ ムキになりますよね。
能町 私も別に、久保さんそんなに競争心ないとは思わないかも。
久保 魚は確かに、今まで培ってきたものがあるから、自信はあるんだと思う。でもこれから経験値を積み重ねていくものに対しては、負けず嫌いが一切発生することなく、鎮火してしまうことが多いかなあ。能町さんも、自転車に対して強気になれるのって、若い頃に60キロ漕いだ経験があるからでしょ?
能町 それはあるかもしれない。でもそのときも別に「よし、60キロ漕ぐぞ!」と意気込んでいたわけじゃなく、今日やってみるか~って感じで気楽にスタートしました。今でも何かの企画で「実家まで自転車で帰ろう」となったとしても、嫌な気持ちはしないです。