ユーモアエッセイの名手、最後の書籍化

『婦人公論』の人気連載がついに単行本になりました。

2024年夏に映画化される『90歳。何がめでたい』をはじめ、ユーモアエッセイが大人気の佐藤愛子さん。「人生の最後にどうしても書いておきたかった」という本作は、子どもの頃の記憶をもとに懐かしい昭和初期の風景と人々の暮らしぶりを描いたもの。しっとりとした筆致のなかにそこはかとない可笑しみが全編に漂い、近年のエッセイとは一線を画した、新境地ともいえる作品です。

100歳になった佐藤さんによる直筆サインつきでプレゼントします。
 

作家としての本能が凝縮された1冊に

98歳で断筆宣言をした佐藤さんでしたが、いつしか退屈を覚えると自然に筆を執り、エッセイを書き始めていたそうです。最初はどこに発表するつもりもなく綴っていた文章でしたが、やがて意見を求めて編集者に相談。それを聞きつけた『婦人公論』編集部が「ぜひ『婦人公論』で連載を」と手を挙げたことをきっかけに、佐藤さんいわく「最後の本」となる本作が誕生しました。
奇しくも、ちょうど50年前、1963年に商業誌で初めて佐藤さんのエッセイを掲載したのも『婦人公論』だったといいます。

原稿は、佐藤さんご自身によって、何度も何度も入念に推敲されています。それも、「先生が改稿された原稿をゲラにしてお渡しすると、また原稿用紙に一から書き直された状態で戻ってくる」と編集者も驚くほど。
216ページとそれほど文字量が多くなく読みやすい本ですが、それは何百枚と書き直した作家の熱意と努力の結晶。まさに磨き上げられた1冊なのです。

一時は帯状発疹でひと月ほど寝込まれ、連載がストップしてしまうかと懸念されたこともありました。締め切りギリギリで元気を取り戻されましたが、寝込んでいる間もずっと、「まだ先の原稿がこれだけあります。この量で本になりますか」と気にされていたそう。そんなエピソードからも、この本に込める佐藤さんの思い入れの強さがうかがえます。

編集部コメント

50年以上にわたる作家生活のなかで、あえて書かずに屑籠に捨ててきたような思い出を拾い集めて書いていくというコンセプトで書き始められた本作。昭和のはじめ、兵庫県は甲子園球場のそば。イチゴ畑に囲まれた住宅地にある佐藤家での思い出深いエピソードが綴られていきます。最初の記憶からその家を引っ越す日までの数年間、大人たちの言動を見ての幼き「アイちゃん」の感想は、子どもらしく率直ながら時にアイロニカル。物心つく頃から作家の視点をお持ちだったのだなと感嘆します。本作の執筆中、佐藤さんは何を見ても幼き「アイちゃん」の目線で見えていたそうです。
「これが本当に、私の作家人生で最後の本。そう思うと感慨深いです」。健やかなる時も老化現象に悩める時も(笑)、書き続けてきた愛子センセイ、出来上がった本を前に感無量の面持ちでいらっしゃいました。
ぜひご一読ください!(編集長M)


■内容紹介
著者が生まれてから小学校時代まで、両親、姉、4人の異母兄、乳母、お手伝い、書生や居候、という大家族に囲まれた、甲子園に近い兵庫県・西畑での日々を、思い出すままに綴る本作品。『血脈』など、著者の自伝的小説では触れられることのなかった秘蔵のエピソードも満載です。幼い「アイちゃん」目線で、“人生で最も幸福だった時代”の暮らしぶり、人間模様を活写します。


■目次
前書き
モダンガールが来たァ
サンタクロースはいなかった
ばあやの鼻
嘘について
全生涯で一番の幸福
なんでこうすぐに涙が出るのか!
お遊戯会
イロハのハッチャン
そしてばあやはいなくなった
安モンはおいしい
ハナはんのハナ
長男なのに名は八郎
はじめての敵意
海の色

 

佐藤愛子
1923年大阪生まれ。甲南高等女学校卒業。小説家・佐藤紅緑を父に、元女優・三笠万里子を母に、詩人・サトウハチローを異母兄に持つ。69年『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞、79年『幸福の絵』で第18回女流文学賞、2000年『血脈』の完成により第48回菊池寛賞、15年『晩鐘』で第25回紫式部文学賞を受賞。17年旭日小綬章を受章。最近の著書に、大ベストセラーとなった『九十歳。何がめでたい』、『冥界からの電話』『人生は美しいことだけ憶えていればいい』『気がつけば、終着駅』『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』などがある。


【応募締め切り日】2024年1月14日(日)
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます(1月末頃予定)
 

■書籍情報
『思い出の屑籠』
佐藤愛子 著
2023年11月10日発売 1,430円(税込)
B6判変形 216ページ
●中央公論新社HP https://www.chuko.co.jp/tanko/2023/11/005708.html

 

 

 

 

 

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