「もうダメだ」とは少し違う

実際に野球をやっている選手にとっての「9回ツーアウト満塁」は、あながち絶体絶命のピンチなのでもない、というのを知った。

たしかにあと一つのアウトで試合が終わってしまうのだが、打者にとっては打球が抜ければ得点のチャンス、ピッチャーにとってはあとアウト一つ取ればゲームセット。

一番集中力が必要な場面で、いろいろなところが見えていないといけない。その試合に携わるすべての者の野球脳が、キュルキュルキュルキュルとフル稼働している場面。

翔大のルーティンを真似して打席に立った父・大介。完全におちょくっています…

「もうダメだ」な語感で使う言葉とは少し違うのだということが、何となく私には理解できた。

そういえば結婚してから何度も夫に訊ねたことがあるのだが、あの「9回裏2アウト満塁」で負けている場面、場所は甲子園球場。逃げ出したいと思ったことはないのか、と。

ちなみに私だったら間違いなく、頭の中は一旦死んだフリをしてしまうんだと思う。これまで大変だった時ほど、あまり記憶に残っていない性分…。何の強みもなくアナウンサー試験を突破しようとした時の記憶もおぼろげだし、そういえば、長男が小さい時の子育ての記憶もほとんどない。

どうにか死に物狂いでやってたんだろうなぁ。なんて幸せな人生なのだ。人には大変ご面倒をおかけしていることまで忘れたらダメですけどね。

でも夫は間違いなく「キタキタキター!」とアドレナリン大放出なんだそうだ。

味方の声をかき消す歓声や野次さえ耳に入らないんだとか。あの球場が揺れるほどの大観衆の中でピッチャーの投げる球に集中できるのは、どんな精神力なのか。