すこぉしずつ野球を覚えていく毎日

食事時の会話の8割は野球の話なので、もうすでにこの母には、何のことだかさっぱりわからない。留学先で毎日わからない言葉に囲まれていたって3ヵ月もすればうっすら何を言っているかわかるようになりそうなものを、わたしは25年近く野球人と暮らしていてまだ「カタコト」の野球しかわからないなんて。むしろ珍しい。

今日も夫と息子達はこの母にわからない「野球脳トーク」で延々と話が続いていく。

「ちがうよ瑛介!」

「この状況でランナーの動きを見て打球が一二塁間を抜けそうになったらカバーに入るのはどっち?」(な…何だって??)

「バットをあんな風にこねて振り上げるから打ち上げんねん」(こねる、って…なにを?)

「パドレスのフアン・ソトがヤンキースにトレードで移籍だってー!」「すげぇー!」

BTSのメンバー7人が全員兵役に入った話題も、ここでは完全に弾き飛ばされてしまう。Vの短髪、かっこよかったのに…。

こうして私は今日も、家族の話題を外国語のようにちんぷんかんぷんで聞きながら、すこぉしずつすこぉしずつ野球を覚えていく毎日だ。