(撮影:岡本隆史)
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第49回はダンサーの田中泯さん。映画『たそがれ清兵衛』をきっかけに俳優としての活動も増え、映画『国宝』では女形の役のため、日本舞踊を習ったそうで――。(撮影:岡本隆史)

前編よりつづく

しゃべるのが苦手すぎて

そしていよいよ映画『たそがれ清兵衛』。泯さんは謀反の疑いをかけられて立てこもるなか、藩命を受けた清兵衛に上意討ちされる余吾善右衛門役。この名演が第2の転機と思われる。

――まぁ、そう言えますね。57歳になった時、あ、この年で土方先生は亡くなってるんだ、と思った。彼は爆発するように生きていた人だったから、エネルギーを使い果たしたみたいに駆け抜けて死んでいったと僕は思ってます。が、一方で僕は、踊ることだけに夢中で生きてきたけれど、自分の時間において歪(ひず)みみたいな時期でした。

一体どうしたらいいんだ、と思ってるところに、『たそがれ清兵衛』の話が来たんですよ。ヴォードヴィリアンのマルセ太郎さんと僕はすごく親しくて、山田洋次監督もマルセさんと交流があったようで、彼が亡くなった際に、僕はその追悼の会で踊ったんですけど、その時、監督も会場にいらしてました。

その後、僕が暮らしている山梨の家まで、スタッフと一緒に口説きに来てくださった。それからしばらくして、主演の真田広之さんは一人で山に来てくれて、一晩飲み明かしました。(笑)