左から、受賞者の芦田愛菜さん、黒柳徹子さん、藤井聡太さん

選考委員の茂木健一郎さん
「AIと人間の共存する未来へ向かう、人類史的な先駆者」

野間出版文化賞選考委員の茂木健一郎さんは、賞の意義について次のように語りました。

「本というのは、人々にいい影響を与えるものだと、わたしは脳科学者として思っています。いま、世の中がいろいろ大変なんですけども、その人の活動が世の中にいい影響を与えている方、そういう方が野間出版文化賞にふさわしいのではないか。今年このように素晴らしい方々が賞をお受けしてくださったことにありがたく思っております」

脳科学者である茂木さんは、藤井さんをかなり初期の頃から「すごい人」と認識してきたと言います。

「私が今、人工知能と脳の関係の研究をしているんですけれども、人工知能と人間がどのように共生していくのかを考えるAIアライメントという分野があります。まさに藤井聡太さんはその先駆者」

藤井さんが高性能のCPUを積んだPCを自作し、将棋ソフトを使って戦術の研究をしていることに言及。

「AIを使う時、人間には2つの道があります。チャットGPTなんかもそうなんですけど、全部AIに任せて自分の方はサボっちゃう。すると、脳はどんどんダメになっていく。もうひとつの道は、AIをRIZAPのように自分を鍛えるマシンとして使う。すると自分の脳はどんどん進化していく。藤井さんはまさに将棋の世界で、AIを使いながら我々の脳がいかに進化できるかということについて人類史的な実験をされている方だと思います」

最後に、藤井さんに対面した印象をはにかんだような笑みを浮かべながらこう述べました。

「今日お目にかかったら、いつもの対局中の怖い感じと違ってすごく優しい感じでいらしたから、ああそうか藤井さん、普段はこんな優しい方なんだなと思って。それが嬉しかったです」

脳科学者も注目する藤井聡太さん。盤上で描かれる物語やタイトル戦の行方のみならず、その人柄や進化の行方がますます注目を集めていくことでしょう。