葬祭扶助だけが増えるカラクリ
総務省の報告書によると、引き取り手のない死者の埋火葬のために適用した法律は葬祭扶助(生活保護法)が約9万3千件と圧倒的に多く、墓地埋葬法は約1万人に過ぎなかった。なぜ、葬祭扶助が突出しているのか。
報告書によると、市区町村が本来、身寄りのない人を葬る時、墓埋法を適用し、行政が火葬するのが妥当と考えても、あえて大家や友人に葬儀実施者になってもらい、葬祭扶助を申請してもらい、公費で葬るという不適切な事例が多数、掲載されていた。
これはどういうことなのか?
ある政令指定都市のベテラン担当者がカラクリを明かす。
「葬祭扶助を申請すると、その費用は国が4分の3を負担してくれるので市区町村と都道府県の負担は4分の1で済む。しかし、墓埋法を適用すると市区町村が全額、火葬費などを立て替え払いし、遺族にその費用の弁済請求をするのだが、多くの場合、支払ってもらえない。すると、市区町村は都道府県にその費用を弁済請求できることになっているのだが、これはあくまで建前であまり支払ってもらえない。都道府県は『遺族がいるならそちらに払ってもらえるまで請求すべき』『うちの県は弁済予算を確保していない』などと渋り、市区町村が費用をかぶるケースが多い。墓埋法の予算を市区町村はあまり確保していないので予備費を流用することも多い。すると、手続きが煩雑になるので、不適切でも葬祭扶助にして国に出してもらった方が楽となる」
都道府県の中には遺族、相続人がいる場合、特例をのぞき、市区町村が墓埋法を適用して全額立て替えた埋火葬の費用を弁済請求できないと明記しているところもある。
特例というのは亡くなった人から遺族がDVを受けたり、相続人が未成年であったり、遺族が亡くなった人の起こした犯罪被害者というかなりレアなケースだ。
「これでは都道府県に弁済請求するなと言われているようなもの。遺族、相続人が遺骨の引き取りや埋火葬の支払いを拒否する場合、圧倒的に多い理由は『絶縁状態だから』というものです。そういう遺族に支払いを求めても難しい」と市区町村担当は話す。