親、子、孫の三代で高座に
そこで初めて落語というものを生で観たというお客様も多かったと思います。落語は奥が深い世界だけど、誰かが入り口で宣伝マンをやらないと中へ入ってきてくれない。その役ができたことも僕は嬉しく思いました。
木久蔵の息子のコタも、小さい頃から落語に興味を持っていましてね。まあ自分ちの商売ですから、「やってみたい」と言うので小学生の時からぼつぼつ僕が教えてきました。9歳の時には親、子、孫の三代で高座にも上がったし、高校1年生の現在では5つくらいの演目をしゃべれるようになりました。
とはいえコタは落語を「やりたい」だけで、落語家に「なりたい」わけじゃない。僕らからも強制はしないつもりです。そもそもマイナーな商売なのに、その割に人数が多いんです。僕が落語協会に入った当時は70人だったのが、今や東京だけで600人近くもいる。
東京に4つしかない寄席に出るだけでも大変ですし、テレビの演芸番組もすでに名前が売れている人や、将来性のある人がピックアップされて出ている状況だからです。
コタは歴史が好きで、趣味は城跡をめぐること。こないだも友だち4人で城跡に行くというから、「どこの城?」と聞いたら掛川城ですって、渋いでしょう。好きな武将も大名も、という四国の地味な大名でね。そういう好きな道をまずは極めて、それを落語で培った話芸で面白く語れる人になるなんて道もいいんじゃないかと僕は思っています。