『孤絶 家族内事件』著◎読売新聞社会部

 

家の中でなぜ悲劇は起こってしまったか

本書は、その重苦しいタイトル、踏み込んだ内容と今日性で、読者を震撼させた『読売新聞』の連載「孤絶・家族内事件」の書籍である。

このところ少子高齢化、核家族化が進み、人とのつながりが希薄になり、孤立した家庭内で起こる悲惨な事件が急増しているという。介護殺人や心中、我が子のひきこもりや障害に悩んだ親による事件、児童虐待や孤立死などだ。これら家族内事件は、たいてい事件性が薄いとみなされ、個人情報保護の観点からも、数行の記事で終わることが多いらしい。

ここでは、それらをひとつひとつ深く丹念に掘り下げ、事件に至るまでの背景を探る。また書籍化にあたり、事件当事者たちの「その後」も再取材し、「孤絶」としかいいようのない現代日本の家庭の問題を生々しく浮き彫りにしていく。

もっともつらかったのは、第2部「親の苦悩」だ。6月に起きた、元官僚が息子の家庭内暴力に悩み手にかけてしまった事件も記憶に新しい。これらの悲劇には日本人のメンタリティーが影響しているという。〈親たちは、子どもの障害や社会への不適応を「恥ずかしいこと」「自分の責任」と考え、周りに助けを求めることができないまま、苦悩を深めていました〉の記述には、決して他人事ではないと思い知らされる。そして、問題を抱えた家庭が孤絶せず、助けを求めやすい社会とは何かについて、考えさせられる1冊だ。

ネット環境の普及による弊害、「助けて」がなかなか言えない日本人気質、変わりゆく家族概念とともに、今後、家族内事件は増えていくだろう。そのためにも「孤絶」の連載、そして書籍化は続いてほしい、と心から願うばかりだ。

『孤絶 家族内事件』
著◎読売新聞社会部
中央公論新社 1600円